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永久就職
第九章

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「それでもな、まあ過ぎたら本当にな」
「下種にだよな」
「なるけれどな」
「それでもある程度ならだね」
「いいんだよ」
 そうだというのだ。
「だから気にしなくていいさ、そういうことは」
「今の僕達のレベルならだね」
「下種とまではいってないさ」
「そうか」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「幸せにしなよ」
 これまでの飄々とした感じを薄めてだ、長渕は伊勢に真面目な感じでこの言葉を告げたのだった。
「美咲ちゃんも弟さんもな」
「二人を迎えるからだね」
「二人共な」
「わかってるよ、全身全霊でね」
「あの娘も受け入れてくれたんだ」
 伊勢自身をというのだ。
「それならな」
「そうせてもらうよ」
 伊勢も真剣な顔で頷いた。
「そして三人でね」
「これまで以上にな」
「いいお店にしてね」
「家庭もな」
 伊勢は一人暮らしだ、もう両親もいない。だがその家庭もというのだ。
「築いていきなよ」
「そうさせてもらうよ」
「じゃあ美咲ちゃんが戻って来たら」
 長渕は飄々とした笑顔に戻って言った。
「わしからもお祝いさせてもらおうかな」
「そうしてくれるかい?」
「是非な」
「じゃあ頼むね」
「ああ、何時までも幸せになりな」
 長渕はその飄々とした笑顔で伊勢に言った、そして店に戻ってきたこれからはずっと店にいる美咲に祝いの品を贈った。この店の看板娘兼奥さんとなることを決めた彼女に対して。


永久就職   完


                2017・4・24
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