第六章
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「そうしています」
「そうなんだね」
「はい、高校を卒業するまではもっと大変でした」
「高校に通いながらだね」
「アルバイトをしていました」
そうして両親の保険金の他の家の生活費を手に入れていたというのだ。
「そうしていました」
「それはまたね」
「大変だったっていうんですか?」
「そうだったよね」
「何とかやっていました」
「それでもね、それはまた大変だったね」
「その時はスーパーでした」
そこでアルバイトをしていたというのだ。
「レジ打ちをしていました」
「だからレジ打ちも出来るんだ」
「多分」
「そうなんだね、けれどそうした生活だと」
聞いているうちに親身になってだ、伊勢は美咲に話した。彼女にサービスの紅茶を煎れながら。美咲は紅茶派だからそれを出したのだ。
「辛いだろうね」
「弟のことがありますから」
だからだという返事だった。
「別に」
「そうなんだ」
「はい、頑張ります」
美咲は気を張っていた、しかしその気の張りも見てだった。伊勢は彼女のことを余計に想う様になった。
そうしてだ、ある日遂にだった。伊勢はこの日も店に来てカウンターでコーヒーを注文して飲む長渕に言った。
「決めたよ」
「あの娘のことかい」
「ああ、言うよ」
「そうするんだね」
「足長おじさんって言うと柄じゃないし上から目線だけれど」
「それでもだね」
「どうしてもね」
最早というのだ。
「言わずにおれなくなったし」
「気持ちを抑えられなくなってだね」
「何とかしてあげたいともね」
「思うからだね」
「歳は離れているけれど」
三十代半ばと十八歳ではというのだ。
「それでもね」
「言うんだね」
「そうするよ」
是非にという言葉だった。
「決めたよ」
「よし、じゃあ決めたらな」
「言うよ」
「是非ね、しかしね」
「しかし?」
「振られるとかは考えてないよな」
「それでもいいよ」
伊勢は微笑みその覚悟も話した。
「もうそうも思っているからね」
「よし、ならな」
「言うよ、明日閉店してからね」
「あの娘閉店の時もいるんだね」
「そう、だからね」
その決心した微笑みで話した。
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