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永久就職
第二章

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「困ります」
「ああ、そうなんだね」
「はい、どうも」
「まあそう言ってもね」
「ですから」
 美咲はあらためて言った。
「そうしたことは」
「言わないで欲しいんだね」
「お願いします」
「それでなんですが」
 美咲はあらためてだ、伊勢に話した。
「明日もですね」
「うん、いつも通りね」
「十時開店で」
「九時に来てね」
「開店準備ですね」
「頼むよ」
 店の話はだ、伊勢は穏やかな笑顔になって話した。
「明日もね」
「わかりました」
 美咲は笑顔で応えた、そしてだった。
 美咲は実際に明日も言われた時間通りに来て真面目に仕事をした。そうした彼女を観てだった。
 伊勢は色々と思った、それで彼女が休みの日の暇な時に馴染みの客である長渕与三にそっと言った。
「今度お店に入ってきたね」
「あの娘だね」
「うん、美咲ちゃんね」 
 彼女の話をするのだった。
「いい娘だよね」
「そう思うよ」
 こう彼に言うのだった、皺がれた如何にも隠居という顔の彼に。
「いつもね」
「そうだね、わしもね」
「長渕さんもだね」
「いい娘だって思うよ」
「だからずっといて欲しいね」
 マスターとして言うのだった。
「この店に」
「そう思うんだね」
「そうだよ、それにね」
 ここでだ、伊勢は顔を赤くさせてこうも言った。
「あの娘をどうもね」
「おや、そうなのかい?」
「うん、実はね」
 その赤くなった顔で言うのだった。
「いや、歳の差があるけれど」
「あんたは自分でもてないと言っていたね」
「若い頃からこの外見だよ」
 伊勢は長渕に今度は苦笑いになって話した。
「太ってて野暮ったい顔で」
「人は顔じゃないさ」
「それは嘘だよ」
「嘘じゃないさ、顔が幾らよくてもね」
 例え生まれもったそれがよくともというのだ。
「腐った奴はその顔が次第に悪くなるさ」
「そんなものかね」
「ゴロツキだのを観ればいいさ」 
 長渕は伊勢が煎れたコーヒーを飲みつつ言った。
「どいつもこいつも悪い顔をしてるな」
「如何にも柄の悪そうな」
「悪い生き方をしてるからさ」
 それで性根が腐ってというのだ。
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