第四章
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「だから不思議なんだよ」
「そう聞いていたけれど」
「僕じゃ嫌かな」
「性格に惚れたから」
明るくて人懐っこい、しかも公平で優しい。ちょっと楽天的過ぎて後先考えていないところが心配になるけれど。
「いいわ、パヴァロッティそっくりでも」
「よく言われるよ」
「やっぱりそうよね」
「イタリアでもね」
祖国でもというのだ。
「言われてるよ」
「じゃあそっくりさんの大会とかにも」
「出てそれで認められたこともあるよ」
「実際にそうなの」
「とはいっても歌は下手だけれどね」
そこは違うというのだ。
「あんな歌は歌えないよ」
「そうなの」
「一度聴けばわかるよ」
パヴァロッティのその歌をというのだ。
「やっぱり彼は世紀のテノールだよ」
「けれど貴方はなのね」
「僕は僕だからね」
パヴァロッティそっくりでもというのだ。
「違うからね」
「そうね、貴方は貴方ね」
「そうだよ」
「そう言えるところが好きになったの」
私は彼にはっきりと話した。
「実際にね」
「そうなんだね」
「じゃあ今日はね」
お昼にキャンバスで話をした。
「貴方のお家で誕生パーティーね」
「君のね」
「ケーキ買ってワインも用意して」
「パスタもね」
彼の大好物だ、イタリア人らしいと最初聞いて思った。
「出して」
「それでよね」
「お祝いしようね、二人で」
「ええ、二人でね」
私はその彼ににこりと笑って応えた、夢に思っていた恋愛ではないけれど私は幸せを感じていた。現実の恋愛も素敵なものだと大学に入ってわかった。実際にその中にいて。
夢を見させて 完
2016・12・23
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