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戦姫絶唱シンフォギア〜貪鎖と少女と少年と〜
第一話 窓拭きの少年
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たいとばかりに隣のマリア・カデンツァヴナ・イヴが観客たちへと近づく。

「私の歌を全部、世界中にくれてあげるッ! 振り返らない、全力疾走だ! ――ついてこれる奴だけついてこいッ!」

 鳳は彼女の発言に少しばかり圧倒された。全世界が見ているというだけでも普通のアーティストなら縮み上がってしまうだろうに、彼女はあろうことに背中を見せ、全世界の人間たちの先を歩こうとしているのだ。こんなもの、ついていかない訳がないだろうに。
 口上も終え、手と手を交わす二人の歌姫。穏やかな空気だった。認め合い、そして今後の歌に対する想いを確認し合い、大団円を迎えようとした――はずだった。


「歌には力がある――。そして、もう一つ」


 マリアが衣装を翻した刹那――碧の光が辺りに迸る。次の瞬間顕現したモノを視て、鳳は知らずの内に血が滲むほどの拳を握っていた。

「の、イズ……」

 舞台を守護するように現れた異形。それは人類共通の脅威、認定特異災害とも呼ばれる“理不尽”、無差別に人間を炭素と転換する悪夢。その名は――ノイズ。そして何よりも。

「また会うとはな……!」


 鳳郷介の両親を炭素と換えていった憎んでも余りある存在であった。


「――狼狽えるなッ!!!」

 突然のノイズ出現に阿鼻叫喚の会場。一喝したのは全く動じた様子の無いマリアである。

(……何故、あそこまで冷静でいられる? ……そして風鳴翼、お前もだ)

 一人が慌てているともう一人は何故か冷静に物事を見ることが出来るようになれる。今の鳳は後者であった。会場にいる観客全てが騒いでいるのを見ていたら自然と頭に冷を乗せることが出来た。
 だからこそ分かるマリアと翼の異常。ノイズの事を知らない訳じゃなかろうに、一切動揺を見せない二人に鳳はひたすら畏怖した。そして、翼と何やら言葉を交わした後、マリアはステージの中央前にその歩を進める。
 ――そして宣言する。

「私達はッ! ノイズを操る力を以てしてこの地球全ての国家に要求するッ!!」

 その口上を耳にした瞬間、鳳は全てが繋がる音がした。同時に、マリア・カデンツァヴナ・イヴがやろうとしている事を理解する。

「世界を相手取ろうっていうのか……あの歌姫は……ッ!?」

 馬鹿げている。
 しばし放心していると、マリアが手に持っていたマイクを高々と放り投げ――そして歌を口ずさむ。


 ――Granzizel bilfen gungnir zizzl


 確かに聴こえたのだ。その歌が。己が意思を貫こうとする絶対的な意志が如実に感じ取れてしまう旋律だった。

「あれは……何だ? 黒い、鎧?」

 瞬きをした次の瞬間には、白いドレスからマントを携えた黒い鎧を纏うマリアがい
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