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戦姫絶唱シンフォギア〜貪鎖と少女と少年と〜
第一話 窓拭きの少年
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 ここで鳳が何らかの事情でこれから行く場所、そしてイベントに間に合わなかったら。そうしたら――彼は修羅の道を歩まずとも良かったのかもしれない。


 ◆ ◆ ◆


 鳳が会場に向かっている間に空はもう陽が落ちそうになっていた。だが鳳の目指す場所は無数のライトに照らされ、華やかな舞踏会と言ったところ。
 これから始まるは比喩抜きの今世紀最高のライブ。会場にはひしめくほどの観客。吐息が、体温が、この会場にいることが夢ではないことを如実に示している。
 チケットに記載されている指定席へ行き、鳳は一段落とばかりに辺りを見回す。
 皆、これから始まる一大イベントにひたすら期待しているのが一目で分かる。もちろん、自分もである。

(そりゃあ日本に来日したマリア・カデンツァヴナ・イヴ、そして風鳴翼のライブだもんな。盛り上がらない訳がないか)

 ――『QUEENS of MUSIC』。
 知らない者はまずいないだろうという最大規模の音楽の祭典。それが日本で行われるというだけでも凄まじいのに、そこには今回誰もが注目する特別ユニットが登壇するというのだ。何を隠そう、ツヴァイウィングの風鳴翼、そして彗星のごとく現れたマリア・カデンツァヴナ・イヴの二名。
 あらゆるメディアで散々広報され、今日のこのステージを見るためだけに来た人達の数は数えるのすら億劫。腕時計を見ると針が今――その瞬間を指し示す。
 一瞬、会場の照明が全て落ちる。観客がざわつくも、スポットの光が舞台の中央にした瞬間、別の意味でざわつき出した。鳳も舞台の中央に現れた二人を見て、自然と胸が熱くなり、意識をより一層集中させる。

 ――そして瞬く光と音、立ち上る炎。

 そのサウンドの名は『不死鳥のフランメ』。
 ついに始まったのだ。爆発するかのような観客たちの声、そしてサイリウム。鳳はその類のグッズは持ち込んでいなかったので、ただ腕を組んでライブを楽しむ。それだけで良かった。言葉も、動作もいらない。
 それだけではない。二人の歌姫の紡ぐ歌はただのユニット曲ではなかったのだ。あえてそれを表現しようとするのならばそう、鍔迫り合い。競い合うように、高め合うように、互いが決して一歩も退こうとしないのだ。
 鳳はただ眺めていた。否、眺めざるを得なかった。呼吸をするのすらままならない。不死鳥の名のごとく、ほんの少し呼吸をするだけで燃えるような炎ごと吸い込んでしまいそうな気がして。

「ありがとう皆!」

 閃光のような時間も終わり、歌い終えた歌姫の一角――風鳴翼が前へ歩み出る。

「私はいつも皆から沢山の勇気を分けてもらっている! だから今日は、私の歌を聴いてくれる人達に少しでも勇気を分けてあげられたらと思っている!」

 湧き上がる歓声。鳴り止むのじれっ
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