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リリなのinボクらの太陽サーガ
思惑のピース
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。ゆっくりと消滅していくグールの山の少し上には小さな空間の歪みが発生しており、暗黒物質が少量だが溢れ出てきていた。

「アニマの器、起動」

エレンはその歪みに右手を向け、アニマの器の力を使って空間を修正する。そして歪みが消えたその空間からは、暗黒物質が出てくることは無くなっていた。

「今回は偶然にも“私”が起こされていたから、即座に対処できましたが……もはや猶予はあまり残されていないようですね。……かつてサバタとジャンゴが出会い、運命の下で戦った死の都イストラカン……世紀末を迎えた幾多もの世界が融合して構築される死の世界が、次元世界を素材として新たに作られようとしている。私が持ち堪えている間にヴァナルガンドとファーヴニルの再封印を行わなければ、次元世界はイストラカンへと成り代わるでしょう。考えられる限り全ての手は尽くしてきていますが、果たして間に合うかどうか……」

先の困難を思って憂鬱な気分になるエレンだが、即座に意識を切り替えて彼女は自分に変身魔法と認識阻害魔法をかける。髪の色などが細かく変わっていき、その姿がアウターヘブン社のシオンになるのと同時に―――、

「2足す2は―――」

「シオンさぁ〜ん!」

「ごふぉーっ!?」

精神のスイッチを変える言葉を口にしようとした寸前、いきなり表の道からシャマルに呼びかけられたことでたまらずせき込む。パタパタと彼女の下に走って来たシャマルに対し、内心慌てて仮面(シオン)を取り繕ったエレンは、シオンとしての口調と姿で彼女と向き合った。

「どうしたんだい、こんな時間に? キミはもう家に帰ったはずだろう?」

「私はそうですけど、はやてちゃんはまだやることがあるそうなので、仕事場でもちょっとつまめるものを持って行ってあげようと思ってたら、シオンさんの姿が見えたので声をかけたんです」

「なるほど、今の情勢だとエナジー持ちはあっちこっちに引っ張りだこだ。キミの様子を見るに、落ち着いて食べる暇も無いようだね」

「そうなんですよね……だから身体壊さないように、栄養たっぷりの私特製肉じゃがを作ってあげたんです。あ、シオンさんにも少しおすそ分けしてあげますね!」

「え……私、ホテルの食事が……」

「はい、どうぞ!」

「あ、どうも……」

小さめのタッパーに入れられた見た目だけは綺麗な肉じゃがを、エレンは困惑しながら受け取ってしまう。返そうにもニコニコ嬉しそうに笑うシャマルを見て、彼女はそんな選択肢を選べるはずがなく、「あ、ありがと……後で食べるよ……」と内心涙目でお礼を言った。

「じゃあそろそろ行きますね! おやすみなさい!」

「あ〜うん……おやすみ。あんまり夜更かししちゃダメだよ……」

そんな風にパタパタとせわしなく去っていった
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