第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
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【真夜中・ルヴーシュ・バーバ=ヤガーの神殿】
「考えていることは、いくつかあります」
獅子王凱の提案に、誰もが耳を傾けた。
『銀閃』と『黒炎』の死闘によって穿たれた穴から月光が差し込めて、その場にいる全員を照らしている。
ジスタートの現支配者たるヴィクトール王。
その王に膝を折る戦姫ヴァレンティナ。
戦姫として同僚であるエレオノーラと執縁のある傭兵フィグネリア。
――対して『東』の連中といえば。
かつて世界を滅亡の危機へ陥れた元帝国戦士団団長シーグフリード。
その愛剣であり、彼の義姉である黒炎の神剣エヴァドニ。
同様にシーグフリードの共犯である元帝国騎士団団長オーガスタス。
いずれも尋常ならざる顔ぶれだ。その6人の注目を集める凱の言葉は、黄金の粒より貴重にも思えたのだ。
「ひとつは――――要人たちの救出です」
考えているというより、凱にとって必須事項だった。
このブリューヌ内乱、どうしても彼らの手で決着をつけねばならない。
当初、ヴィクトールやヴァレンティナは凱の神格的な戦闘力に任せてテナルディエ暗殺を実行に移すつもりだった。
しかし、凱はそれらを抑えた。
もしテナルディエを『国家の敵』という形で対処すれば、内乱をアスヴァールやザクスタンに勃発を認めている――だけでは済まされない。
あの男を「ブリューヌ・ジスタートの敵対者」とすれば、倒せても倒せなくても、ムオジネルをはじめとした反国家、ジスタート内部の反勢力の英雄として神聖視される。
そうなれば、第二第三のテナルディエを生み出しかねない。
万民に示すべき大義を持たぬ――以前に異端認定を受け死亡扱いとなっている凱では、一時的に鎮静化できてもその後の動乱が余波として続くだろう。死んだはずの『亡霊』が黄泉返ったとなれば、再び訪れるのは――――力無き民が生み出す、堪え切れぬ涙と悲しみの叫びだけだ。
大義を持つ者――ブリューヌの国王の許しを得た者のことだ。リムアリーシャ――リムから聞いた話では、既にファーロンの息女レギン殿下を擁護しているとの事だが、大義そのものであるレギンの導き手である銀の流星軍の総指揮官がいないため、大義なす行為――すなわち『正義』の執行が成り立たない。
銀閃の風姫、エレオノーラ=ヴィルターリア。
凍漣の雪姫、リュドミラ=ルリエ。
ジスタートの戦姫二人。レギンが王族の身を証を立てる瞬間は、総指揮官のティグルを支援する彼女の未来に大きく影響する。
そして……凱の瞼に浮かぶはくすんだ赤い髪の少年の姿。
――ティグル――
何より、大切な主様の帰りを待つティッタの為に、これは絶対に果たさねばならないことだった。
「ティグルヴルムド=ヴォルン伯爵と、
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