第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
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ートの『とある』海原の入り口を指す。
「……ヴァルタ大河?」
凱は無言で頷いた。
整った唇の戦姫から、透き通った疑問符が響く。謀略家を自負する彼女にしては珍しい仕草だった。
だが、凱の指さした地点はそれだけではなかった。
「フィーネ。この石とこの小石をレグニーツァ、ルヴーシュに――それぞれの公国へ」
言われた通り、フィーネは次々とポリーシャ――レグニーツァ――ルヴーシュ――オステローデ――今度はそれぞれに拳ほどの大きさの石片を置いていく。
一見、要領を得ない石並べ遊びなのだが、次の石を並べた時に一同は何かに気づいたようにハッとする。
「この『黒鉄』をルテティアのディエップ港へ――」
一回り大きい物体を指示された場所へ置くと、ブリューヌ内部の相関図が浮き彫りになる。各勢力と国境能力を可視化した『地図』が出来上がった。
「なるほど……その鉄屑が『黒船』というわけか」
オーガスタス=アーサーが意味深げにつぶやく。
再び凱は皆に地図へ注目を集めるよう声をかける。
「みんな見てくれ。均衡が非常に繊細性の富んだ配置となっている」
ほぼ『銀の逆星軍』の領地と化したブリューヌが、ちょうどジスタートに隣接している。そのジスタートはライトメリッツ、オルミュッツの主不在の為に、ちょうどいい『穴』ができている。
そして、各国はブリューヌ領土の切り取りを断念している状態だ。当面は『赤い馬』と『黒い竜』のにらみ合いと踏んでいるだろう。
頭の中でチェス盤を想定したヴァレンティナは、口元に手をつむんだ。
――――詰み。
既に王手をかけられた盤上の采配。それどころか、『星』に『王』を奪われたといった方が正しい。
敗北状態のノーゲームにして、絶体絶命のノーライフ。
この四面楚歌にして孤立無援の状況。こんな状態で先ほど語られた『黒船』がヴァルタ大河に来航した瞬間――ジスタートは壊滅的被害を被る。
陸からの侵攻戦略は、戦姫を捕虜にしたときにほぼ完遂状態となった。テナルディエ達の残す問題は海からの侵攻だ。
レグニーツァ、ルヴーシュ、オステローデ。陸戦公国と連携のとれない相手なら、例え一騎当千の戦姫といえど手の打ちようがあると踏んだのだろう。
これでは数十年前に開かれた『ヴァルタ大河攻防戦』の二の舞だ。
なお、凱の語る結末は皆の常軌を逸脱していた。
「海と陸に分散侵攻させた『別働部隊』が、王都目前で合流して完全包囲して一気に占拠。おそらく、これが彼ら『銀の逆星軍』の描くシナリオでしょう」
そう推測した凱には一つの根拠があった。
過去の機界眷族……地球外知生体認定ナンバーEI-16との戦闘記録が凱の頭によぎったからだ。
通称、列車砲ゾンダー。
敵の潜伏先を断定したはいいが、あまり
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