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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
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の眼光はジスタートへ向けられる。
そうなれば、真っ先に標的となるのはライトメリッツやオルミュッツ、レグニーツァを始めとした7公国だ。
王都の結界の役割を果たす公国が戦略されれば、ジスタート首都は壊滅的な打撃を受ける。
だからテナルディエは銀の流星軍に加わる戦姫を捕縛したのだろう。特に銀閃と凍漣の両国は公主不在だ。ヴォージュ山脈を挟んでアルサスと国境を接している点において、凱としては見逃せなかった。いつか、銀の逆星軍がライトメリッツとオルミュッツを奪いに来るかもしれないと――――
奇しくも、それは内乱初頭、テナルディエがアルサスを焼き払う要因と同じだと分かるものなどいなかった。

「分かった。戦姫については余から伝えよう」

軽快な口調でヴィクトールがいい、ヴァレンティナは表に出さないものの、流石に驚いた。それは凱も同様だった。
リムから聞いた、戦姫に対する王の態度は『たよりない』という印象だった。だが、あくまでそれはエレンの印象。好きか嫌いかと言われれば、好きではない。とりあえず王だから接しているという認識だった。
超常の力を持つ戦姫を恐れるあまり、戦姫同士を争わせる始末だとも聞いている。しかし、その印象はあくまで印象に過ぎなかった。
その戦姫でさえ打開できない状況にあり、時代を動かす可能性を持つ超勇者を前にしたならば、凱の力を恐れるはずだ。『人を超越した力』を――。

「なに、これでも余は連栄なる黒竜の代理だ。例え『陰険』や『度胸がない』と揶揄されても――王であることに変わりはない。それに複数の戦姫と接点を持っていれば、シシオウ君も今後何かと動きやすくなるであろう?」

その発言に凱は虚を突かれた。
例え高齢に差し掛かろう老体でも、王として賄われたその眼力と観察力はいささか衰えていない。

「ご慧眼恐れいります」
「この程度はな。『有能』な戦姫が余の膝にいると思うと、いろいろと考えさせられるものだ」

そう視線をティナに送ったヴィクトールは、どこか迷いさえ晴れたように凱は感じた。
同様に、ヴィクトールもわずかな会話で感じ取ったようだ。この青年ならあるいはと――。

「智勇を兼備し、政戦両略に長け、優しさと厳しさを兼ね備え、状に目を曇らせず、かといって理に傾くでもなく、正義漢にあふれた王……そなたなら成れるだろうな。『勇者王』に――」

かつて、機界文明が猛威を振るった時代に、人々が求めた英雄最大の称号を、ヴィクトールは『勇者王』を『魔弾の王』と比してこう述べた。

(勇者王……そうだ。俺は『勇者』でなければならない)

ヴィクトールの言葉を受けて、ゆっくりと心に染みこませる凱だが、一つだけ怖さを抱くものがあった。

(だけど……俺は決して『王』には成らない)

王とは、勇者が挑むべき存在だ
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