第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
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し、凱の僅かな期待を裏切る形でヴァレンティナは事実を申す。「いません」と――。
「それどころか、各国の王は我が身可愛さに、ブリューヌ侵攻を渋るばかりです」
「どういうことだ?ティナ」
「ブリューヌ最強にして国王直属の軍隊……ナヴァール騎士団壊滅の報を受けたためでしょう。『ブリューヌの領土を切り取ろうものなら、貴様らもこうなる』という伝言の意味も込めて」
つまり、内乱罪という名目で国王騎士団を逆賊討伐に向かわせたのが、テナルディエにとって都合のいい宣伝効果になったという。
特にザクスタン、アスヴァールは何度もナヴァール騎士団に苦汁をなめさせられたことだろう。戦神の障壁と比喩される騎士団が崩壊したとなれば、西のネズミどもは歓喜の声を上げて喜び、すぐさま大地をかじりに行くだろう。
ヴァレンティナに代わりヴィクトールが続ける。
「銀の流星軍敗走に続き、ナヴァール騎士団の敗北の報から、再び世界は大きく動いている」
テナルディエ公爵と長きにわたる交流がある他国の貴族は、彼の野心的なまなざしに感づいていた。事実上、反逆決起が成功した今こそ、他国へ乗り込んでいくのではないか――と警戒するものさえいる。
いや、乗り込むなどと、上品な言い方は似合わない。
踏み荒らすつもりだ。荒廃した時代をただ突き進む一匹の『魔獣』として。
「シシオウ君なら既に分かっておるだろう。『軍』という意味での味方はなし……そして意味さえもないことを」
「はい。わかっています。今の我々は喉笛に牙を突きつけられているに等しいことくらいは」
眉間にしわを寄せながらつぶやいた凱の一言は、各国大陸の現状を正確に把握していた。
そのたった一言にヴァレンティナは厳しい表情を浮かべ、凱に震える声で伺う。
「……選ぶ必要があると……ガイはそうおっしゃるのですか?」
光と影。表と裏。過去と現在。
選択肢は二つのみ。
時代を構成する要素の選び方では、大きく未来を変えていくだろう。
彼女たちは今でも迷っているはずだ。
ならば、自分が未来の一つを拾い出さなくてはならない。
「俺たちは『選ぶ』ためにここへ集ったはずだ。『未来』という言葉はその為にあると、俺は思っている」
「では、ガイは何を望むのですか?」
ここで凱は二つに限られない『もう一つ』の選択を見出す。
「勝利でも敗北でもない――戦争の早期終結ただ一つ。その為に戦姫の協力が必要不可欠です」
その言葉に、全員が視線を凱に投げかけた。
少なくとも、凱個人の意思は戦争へ介入する気はない。あくまで『目に映るものを全て救う勇者』という姿勢を貫くだけだという。
戦姫に協力を持ち掛けた理由は、凱に一つの懸念があったからだ。
おそらく、ブリューヌ掌握に目途をつけた瞬間、獅子
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