第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Aパート 】
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
我が戦姫エレオノーラ=ヴィルターリア、リュドミラ=ルリエを救出するのが先だと?」
ヴィクトールが瞳を開いてつぶやいた。それに構わず凱は言葉を続ける。
「はい。彼らは『銀の流星軍』の総指揮官――今のブリューヌはいわば海上の嵐の前兆です。余裕のあるものは嵐に備え、ないものは嵐に怯えるように……近隣諸国、アスヴァールやザクスタン、そしてムオジネルも今後のブリューヌがどう『転覆』するか注目しているはずです。ですから、『丘』という小舟を操舵する『先導者』の彼らがどうしても必要なのです」
ここで凱は、バートランから教わったディナントの戦いが行われた経緯を一度振り返る。
それぞれが互いに独立した、無関係の事象であったにせよ、空間と時間の軸が例え微細に『ズレ』た場合、それらは『安定』を求めようとして一つの『事象』が誕生する。
『国境線の川の氾濫』という要素が拠り所の安定を求めて、そこに住在するヒトを伝って領主から高官へ、そして陳情として国王の元へ辿り着いた。神より授かりし王の僅かな采配が、ブリューヌとジスタートという海辺に、戦争という巨大な荒波を引き起こし、国の基盤たる民を波間にただよう船のように揺さぶっている。
無論、アルサスという辺境の丘に存在する小舟もまた、例外ではない。
既にムオジネルをはじめとした各国はこれらの動きに覚醒し、ブリューヌ内部に関心を深め、警戒というべきほどに間者を忍ばせたりと行動を示し始めている。
――――ただ、国の風下に生きる民草は、そのことを知らずにいたままだ。
「……先導者――――アンリミテッド」
ヴァレンティナが儚くつぶやいた。かつてオステローデに滞在していた時に聞いた言葉を受けて、凱はコクリとうなずいた。
「だが、そんな悠長なことも言っていられんのも事実だろうが」
今度はシーグフリードが突き詰めた。阿鼻叫喚の代理契約戦争を戦い抜いたものが知りえる助言をもたらす。
フェリックス=アーロン=テナルディエ。
マクシミリアン=ベンヌッサ=ガヌロン。
この両者には、人の世の理など一切通用しない。
まさしく、『人』も『魔』も『力』で『世界』を『つくりかえる』眷族……覇獣に等しい。
二人を滅ぼさねば、ブリューヌ、ジスタートは滅びる。
いや、たった二国だけでは済まされない。
5大国家の基礎と成す大陸全て……それどころか、独立交易都市……いや、全世界にまで及びかねない。
特にこの結末を誰よりも敏感に察知し、確信を抱いていたのは、他ならないヴィクトールだった。
「時代の風が『民』へと流れるようなら、それも仕方がないと思っていた」
ジスタートの支配者たる存在に、全員が視線を注ぎこんだ。
自国が滅びるのは最悪の結末――『王』以外には計り知れない苦渋のはずだ。だが、この
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ