第二幕その六
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「喋られなくなったりね」
「あのお話は可哀想ですね」
人魚姫のお話についてはです、ナターシャも知っていてです。悲しいお顔になって言うのでした。
「切なくて」
「幸せになれなかったから、人魚姫は」
ドロシーも人魚姫について悲しく言います。
「むしろ幸せから遠ざかったばかりで」
「何かを得て何かを失ってばかりだよね」
ジョージも言うのでした。
「脚の代わりに声とか」
「そして何も出来なくてね」
カルロスも今は悲しいお顔になっています。
「最後は消えてしまうから」
「ああしたことがオズではないんだったら」
神宝も他の皆と同じお顔です。
「凄くいいことだよ」
「悲しみは少ない方がいいわね」
ジュリアも五人に応えました。
「オズの国では殆どないものだから」
「そうですね、この国ではですね」
「悲しいことはないですね」
「誰も死ななくて幸せになれるから」
「悲しみはないですね」
「こうした国ですね」
「うん、本当に幸せな国で」
そしていうのです、モジャボロも。
「人魚姫みたいなことはないよ」
「僕は人魚姫のお話は知らないけれど」
ジャックはオズの国にいます、だから知っている筈がありません。このことは実は外の世界から来た魏五人とモジャボロ以外の人達は皆そうです。
「それでも幸せになれなかったんだ」
「そうなんだ」
「王子様と一緒になりたかったのに」
「なれなくてね」
「最後は消えてしまうの」
「泡となって」
五人はジャックにお話しました。
「そうしたお話だから」
「本当に悲しいの」
「幸せを求めたのに得られなくて」
「そして消えてしまうから」
「こんな悲しいお話はないわ」
「聞いていて胸が痛くなるよ、そしてね」
俯いて言うジャックでした。
「これが悲しいって気持ちなんだよね」
「オズの国では滅多に感じることはないけれど」
「とても辛い感情だよ」
かかしも木樵も言います。
「本当にね」
「こうした感情は出来るだけ感じたくないね」
「そうだね、オズの国にいてよかったよ」
しみじみとしてです、こう言ったモジャボロでした。
「この国の人魚の人達は声もなくさないし消えることもないから」
「だからだね」
「人魚姫はいないんだね」
「そうした悲しい人魚姫は」
「そのことが嬉しいよ」
モジャボロにしてもというのです。
「僕にしても」
「ええ、というか脚が人間のものになるのは」
ジュリアが言うにはです。
「この国では海草を食べればね」
「そうそう、すぐにだね」
かかしがジュリアに応えました。
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