第61話<浴衣娘>
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「は?」
私が振り向いたときには彼女の姿が視界から消えていた。
「あれ?」
直ぐに視界の下の方から『シット』という声が聞こえた。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
比叡が来て金剛を助け起こした。
その状況を見た私は悟った。
(ははーん。これは草履が原因だ)
海外から来た金剛は浴衣だけでなく草履だって履いたこと無いだろう。
(しめた! 今夜の金剛姉妹は低速だぞ!)
面倒なことになりそうだったら即逃亡だ。
「司令……」
ちょっと得意になっていた私は、そのひと言で思わず寒気がした。
思わず振り返る。
「ああ、山城さん」
彼女はウルウルとした瞳で訴えてくる。
「私も……ご一緒して宜しいでしょうか?」
「あ、ああ」
別に断る理由もない。日向、恨めしそうな顔をするなって。
しかし山城さんは金剛とは違って草履は履き慣れているな。
もっとも彼女の場合、仮に振り切ったとしても別の意味で怖い。後から出てきそうだ。
気付くと私たちの足元のほうから『チッ』という舌打ちが……早くも、混戦状態か?
そこで落ち着いた声がする。
「艦隊で……いえ、皆で行くのが楽しいですね。司令……」
「あれ?」
そこには、とても落ち着いた女性が立っていた。
「あれ? ……どなたでしょうか」
「あら、嫌ですわ司令」
ちょっとムッとした表情をしたので、やっと分かった。
「赤城さん!」
(まさか……)
ポニーテールで浴衣を着ていると一瞬、分からなかった。
「いや近所の誰かかと思ったよ」
そんな私の視線に彼女は恥ずかしそうに言った。
「フフ、夏ですし浴衣ですから。ちょっと後ろで結んでみました」
そう言いながら後ろに手を当てている赤城さん。
(うん、正直、見違えました)
「それで、お櫃を抱えなければ最高だと思います」
つい口が滑った。
「あの、何か仰いましたか?」
あ、ちょっと彼女の顔が引きつった。
「いや、何も言ってない」
でも普段の戦闘とは違って街角での彼女は、さほどしつこく追撃して来ない。ホッとした。
「あらぁ素敵。お姉さま」
近寄ってきた龍田さんも赤城さんを持ち上げた……いや、龍田さんも独特で妖艶な雰囲気です。
「ウフフ……浴衣って良いわねえ」
しかし長身で美人揃いの艦娘たちが実家の前に勢ぞろいする光景。これは、かなり人目を引く。
案の定、実家の前を通る人は、ほぼ全員が立ち止まったり振り返ったりしている。かなり注目の的だ。
「はい、せっかくだから撮りますよ」
青葉さんが数枚、撮影していた。
気のせいか周りの通行人は彼女たちが芸能人か何かと勘違いしているように
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