暁 〜小説投稿サイト〜
北欧の鍛治術師 〜竜人の血〜
聖者の右腕V
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商業地区を練り歩く。途中でパンフレットを見つけたので一枚頂戴してからそれを眺めてめぼしい店を見つけては見物に行く。特にすることもないので近くのベンチに座って寝る。数十分後、起きてまたパンフレットを眺めてめぼしい店を以下略。
「・・・暇だ」
そう、彼は、アイン・フィリーリアスはとてつもなく暇なのである。飛空艇からの落下時ポケットに入れていた財布の中にはアルディギア通貨。現地に行ってから日本円と替えるつもりだったので買い物はできない。ここは魔族特区。簡単に入島できる場所でもないので両替商の類はいないと言っていい。荷物はもちろん飛空艇の自室に置いてあったので持ち合わせていない。故に。暇なのだ。現在の時刻は14時。彼らが学校に行ってから約5時間経過している。次は本格的に寝ようかと思ってベンチに横になりかけた時、竜の鼻が鉄臭い匂いを捉えた。さっきこの付近に来た時には無かった匂いだ。不審に思い、嗅覚を通常時の数倍に引き上げて匂いが濃くなる方に向かって行くといつの間にか商業地区の端っこにたどり着いていた。パンフレットの裏の絃神島の全体像が描かれたものを確認して自分がいる場所と匂いのする方向を確認。匂いの源は絃神島北地区、恐らくは研究所街。渡れそうな橋に繋がっている道を探して竜人の人外じみた身体能力で路地裏を駆け巡る。方角的には大体あっていたようで、すぐに北地区を目の前に見据える位置まで来る事ができた。ここからは自分の鼻だけが頼りだ。なぜか匂いが時間が経つにつれてどんどん薄くなっているがならばもっと早く、と脚が悲鳴をあげるまで走り続ける。次に反応を感じ取ったのは耳。これも嗅覚同様、感度を普段の数倍に引き上げる。人間二人ぶんの足音を研究所街に比較的中心から感知した。目的地をその付近にして走り続ける。ただし、有事の際のために速度を少しずつ落としながら。五分ほど走り続けて人の話し声が聞こえてきた。小走り程度になるまで速度を落として建物の間を縫うように移動する。暫くして人影を見つけ、建物の間に入って様子を伺う。声の主は先日の宣教師とそれにぽつぽつと応える人工生命体だった。ここに来てようやくわかったがあの鉄臭い匂いはやはり血のようだ。人工生命体の少女が纏っている白い布にこびり付いた血がまだ新しかった。あの宣教師が誰かを襲った拍子に返り血が飛んだのだろうか。
「(・・・確かめる手段は奇襲・・・だな)」
ISの拡張領域から多少サイズのある針を実体化。人工生命体を狙って静かに投擲。その音に反応して少女がこちらを向くが、遅い。針は少女の首元に刺さり、少女はそのままよろめいた。異変に気付いた宣教師が少女を見てからこちらを向く。
「あなたは・・・先日の空から降ってきた方ですか」
「あれは不可抗力的な力が働いたもんでね、悪かったとは思ってるよ。それとなー、この近くから血っぽい匂いがした
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