43話 ア・バオア・クーの戦いB 3.13
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* ジェリド艦隊 旗艦内 艦橋
ジェリド、マウアー、カクリコン、エマと並んで戦況を眺めていた。
既に地球落下軌道へ乗ったア・バオア・クーは僅かな抵抗にあっているだけであった。
誰の目でも見ても分かる。絶望的な程地球を壊すだろうと。
ジェリドは半包囲するシロッコ艦隊の前、ア・バオア・クーが目の前を通過する形で航行していた。
位置的にネオジオン、アクシズ分艦隊、カラバとも接触はない。唯一危惧するとなると後方より差し迫っているロンド・ベル本隊であった。
ア・バオア・クーの落下に逆らうように光が見えた。その光は緑白く、そして赤くぼやけても見える。
その光が発する声が何故かジェリドには聞こえた。助けて・・・死にたくない・・・生きたい・・・。
ジェリドは首を振って、幻聴をかき消そうとした。その様子をみてマウアーは心配そうに声を掛けた。
「どうしたの?ジェリド司令・・・」
ジェリドは顔を手で隠し、こめかみを指で掴む。
「いや・・・何か幻聴が聞こえてな・・・」
その答えにカクリコンがジェリドに言う。
「いいから、何でもいいから話せ、ジェリド」
カクリコンの屈託ない言い方に優しさを感じ、ジェリドは素直になった。
「あのア・バオア・クーから声が、いや・・・これは悲鳴だ。あの隕石に何かが集まっている」
ジェリドの言にエマがため息を付く。
「はあ、貴方は一番優れているのよ、この中で。そんな思いつきも情報ない中で無視はしないわ、言って」
ジェリドはエマにも押されて、続けて話した。
「因果関係からすると、あのア・バオア・クーが媒体となって、地球の意思を、地球に住まうものの生命の意思を体現しているのだと思う。その悲鳴だ」
3人とも無言だった。ジェリドは続けた。
「俺らが落とした隕石のダメージは大きい。あのア・バオア・クーが落ちれば止めだ。地球の人の多くが脱出できずに留まっている。半数は逃げることはできても、移動さえ難しい人たちは命運を共にするしかない」
カクリコンは歯を食いしばっていた。犠牲の上にとかいうキレイごとを彼は受け入れるに我慢が足りなかった。カクリコンは3人を前に振り返り、艦橋を後にしようとした。それをジェリドは敢えて悟るように尋ねた。
「何処へ行こうというのは聞くまでもないな」
カクリコンはジェリドの声に一瞬立ち止まるが無言で出て行こうとした。それをジェリドがカクリコンへ語り掛けた言葉で彼は立ち止まった。
「お前の気持ちは良く分かる。これはオレたちの贖罪だ。共に行こう」
カクリコンは振り返り、エマとマウアーを見た。2人共頷いていた。
「お前ら・・・」
エマが少し笑みを浮かべた。
「フフ・・・軍の命令だと言っても、私た
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