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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十四話 肉を斬らせる
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式が行われる。時局重大な折、大袈裟な式典は控えるべし、そういう事で式は控えめなものになる……。実際は式典を盛大にすればそれだけテロの危険度が増す、それを恐れての事だ。
貴族達はその式典に出席した後、クロプシュトック侯の反乱鎮圧に向かう。身内を殺された怒りをクロプシュトック侯に対する報復で晴らそうとしている。だが内心では反乱を徹底的に叩き潰して、平民達に恐怖心を植え付けるのが狙いだろう。
だがこちらも好都合だった、彼らがクロプシュトック侯にかかずらわっている間に軍の再編を進め改革の内容をまとめる事が出来る、そう考えていたのに……、ヴァレンシュタイン、嫌らしいところを突いて来る。
「どうしたものかな、軍を動かすべきだと思うか?」
「……」
わしの問いかけにリッテンハイム侯もフェルナーも答えない、二人とも渋い表情をして口を閉じている。帝国軍は今戦える状態には無いのだ。
敵の意図が読めてもそれを防げない、無力感が全身を包んだ。嫌な沈黙が続いた後、リッテンハイム侯が口を開いた。囁く様な口調だ、目には強い力が有る、睨む様な視線をこちらに向けてきた。
「一つ考えが有るのだがな」
「……」
「いささか非常識な案ではあるのだが……」
「……その非常識な案を聞かせて貰おうか」
わしの言葉にリッテンハイム侯が暗い笑みを浮かべた。
帝国暦 486年 8月 7日 ミューゼル艦隊旗艦 タンホイザー ラインハルト・フォン・ミューゼル
「知らぬ振り? どういう事だ、それは。フェザーンを捨てると言うのか」
会議室に俺の声が響いた。思ったより声が響く、ケスラーとクレメンツが心配そうな表情で俺を見ているのが分かった。少し興奮したようだ。
『捨てるのではありません、この状況を利用するのです。反乱軍がフェザーンをどうするのかは分かりません。征服するのか、或いは協力体制を結ぶのか……。ですがどちらにしろそれを理由に貴族達を反乱軍にぶつける事が出来る。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯はそう考えています』
「……」
『フェザーンとは特別な繋がりを持つ貴族達が多いのです。彼らはフェザーンを失う事に耐えられないはずだと御二方は見ています』
「それを利用すると言う事か」
フェルナー中佐が頷いた。
『その通りです、単純に出兵しろと言っても彼らは嫌がるかもしれません。ならばこれを利用するべきではないかと……』
「……そうかもしれない、知らぬ振りか……」
『はい、それに今軍を出すことは危険でしょう』
「……」
フェルナー中佐の言葉にケスラーとクレメンツが顔を顰めるのが見えた。
敢えて見過ごすことでその状況を利用するか……。というよりそれしか方法が無い、そういう事だろう。フェルナー中佐が言ったように軍を
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