アージェント 〜時の凍りし世界〜
第二章 《暁に凍る世界》
ドキドキ!?温泉パニック!!@
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る女将。荷物を下ろし、先ずは一息つくと……
「温泉……行こ……。」
待ちきれない様子の氷雪が急かす。が、
「ん……ちっと考え事したいからな。ミハイル、頼めるか?」
「……いいのかい?」
「お前なら、な。」
暁人は氷雪を他者と二人きりにしない。その数少ない例外がミミとエヴァだが、暁人のミハイルでの信頼はそれに並ぶものだった。
「……そうかい、じゃあ頼まれよう。」
ミハイルは頷くと荷物からタオルだの何だのを取り出して準備をする。
「それでは私も……」
「ああ、ミミ。お前はちょっと残ってくれ。」
「ご主人様……?いえ、分かりました。」
ミミが特徴的な長いウサミミをピコピコ折り曲げて了解の意を示す。ミハイルと氷雪が部屋を出ると、ミミの方から話を切り出した。
「お嬢様を遠ざけたって事は、次の作戦ですか?」
「ま、そんなトコだな………」
頷き、暁人は自らの作戦を説明し始めた……
「……ミハイルさん。」
氷雪が隣を歩く大切な兄のほぼ唯一と言っていい親友に声を掛ける。
「どうしたんだい、氷雪ちゃん。」
「お兄ちゃんは……何をしているの?」
氷雪にはどうしても気に掛かる事があった。彼女の兄の行動だ。暁人は時折、数日間家を開ける。大抵の場合はミミが家に残るか、エヴァが二人の代わりに白峰家を訪れ、氷雪を見守っている。
暁人の外出が増えたのはここ最近だった。氷雪の病を直す為と言うが、帰ってくる度、暁人の表情は険しくなっていた。実際には襲撃による体力的、精神的な消耗の為だったが、事情を知らない氷雪はそうは受け取らなかった。
即ちーーーー
「私は……もう、助からないの?」
氷雪には、自惚れでも何でもなく、兄に愛されているという自覚があった。そして、自分もまた、兄をーー家族愛的な意味でーー愛していた。
兄の顔が優れないのはひょっとしたら、自分の助かる見込みが薄れているからではないのだろうか?もし、自分が兄を助ける為に頑張って、その全てが徒労であれば自分はどんな顔をするだろう?
しかしーーー
「いや、君は助かるよ、氷雪ちゃん。」
ミハイルの口から出たのは、明確な否定。
「暁人が必ず助ける。君が絡んだ事で、不可能があると思うかい?あの、暁人が。」
そう、氷雪の兄はあの暁人なのだ。妹の為なら天の神様から地獄の閻魔まで全てを敵に回しても厭わない男。彼ならば、妹の幸せを邪魔する全ての障害を問答無用で捩じ伏せるに決まっていた。
「君は、助かるんだ。暁人が必ず助ける。だから、安心していい。きっとその日は近い。」
ミハイルの断言に、氷雪は小さく頷いた。
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