提督はBARにいる外伝、ロッソ
元提督は地下室にいる。
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「相変わらず不健康そうな場所にあるわね、貴女達のオフィスは。」
「大っぴらに動くべきじゃない部署の扱いなんて、こんなものよ。実用性も兼ねているし。」
永田町、内務省の地下。
表から入るには3つの内に1つしかない扉や、唐突に上下に分かれた階段、それらの正解を探して抜けなければならない、迷宮のような通路。
階段を上り下りして、通路を右に左に曲がり、ここが地下なのかも確信出来なくなる程の奥に、『統合分析室』とプレートが付けられた鉄扉がある。
そこに向かって、二人の女性が歩く。
一人は、一種軍装の黒衣に帯刀した長い黒髪の女性。
手には紙袋を下げており、そこそこ大きな荷物が入っている。
もう一人は、白く輝く髪に紅い眼のワンピース姿の少女。
あまりにも通路の殺風景さや、交わされる会話に対して、幼くすら見える。
両者の共通項は『元艦娘』であること。
前者は、戦いに無理が出て身体を壊しての引退。今は教鞭を執る立場にある。
後者は、この先の職場に『秘書』として移籍したが故に、現場を離れた。
そして、後者の主はこの先の扉の向こう。
二人が入っていった先にソファで資料を目隠しに寝ていた。
灰色のカッターシャツ、グレーのスーツ姿で、そのジャケットはソファのアームレストに引っ掛けて置かれている。
そんなだらしない姿の男を、黒髪の女性が資料の上から頭を小突いて起こす。
「いてっ!」
目隠しにしていた資料が落ちるのを拾いながら、男は飛び起きる。
三十前だろうか、若く見える男にしてはだらしなさ過ぎではないだろうか。
寝起きゆえか、不機嫌な顔で起こした帳本人を向く。
「壬生森、ご機嫌はどう?」
「最悪だな。原因は主にお前とお前の旦那が悪い。私を寝不足にした帳本人に起こされるのは流石に腹が立つ。」
内務省統合分析室“分析官”壬生森。
それが彼の名前と肩書き。
「元帥や私をそんな風に言える人も、めっきり減ってしまった。」
「お前が昔は『余』とか名乗ってたのを知ってるのもな。三笠、今回の一件は流石にくたびれた。しばらく開店休業のウチになんの用だ?」
黒髪の女性を『三笠』と呼んだ壬生森は、テーブルの上に手を伸ばして、そこで止まる。
「やっぱ飴玉じゃ様にならんな……」
テーブルの上のガラス皿に盛られた、個包装の飴をひとつ取りながら、壬生森はぼやく。
「タバコよりは健康的じゃないか?うちのも、タバコを少しは控えてほしいのだが……」
三笠も壬生森の向かい側のソファに座って、皿から飴を取る。
「60も回って今更禁煙、ってタマじゃないだろ?ありゃ、死ぬまで絶対に止めないな。」
「違いないな。」
「で、三笠もどういう風の吹き回しだ?いつもなら赤レンガに呼び出すくせに。」
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ