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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十三話 虚実
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れない思いが有る、そんな事が有るのか? そんな事が出来るのか? だがこれまでの事を考えればクレメンツの言葉には十分に信憑性が有る。第一にあの男を常識で図るのは危険だ。

「シトレ元帥はそんなヴァレンシュタインの力を見抜いたのだと思います。そして積極的に彼を受け入れるべきだと考えた。しかしロボス元帥は違った。彼はシトレ元帥とは敵対していた。当然ヴァレンシュタインに対する扱いも違ったのでしょう」

「シトレ元帥はそんなロボス元帥に不満を持った、卿はそういうのだな」
俺の問いかけにクレメンツは無言で頷いた。確かにシトレは不満に思っただろう。ヴァレンシュタインを用いれば帝国との戦いを有利に進められる、そう思ったはずだ。そしてヴァレンシュタインを活用できるのは自分だけだと思った……。

「シトレ元帥だけではないでしょう、ヴァレンシュタインも同様だったはずです。彼はカストロプ公によって全てを失った。それがリヒテンラーデ侯の、帝国の方針だと知っていた……」
「……」

「である以上、彼はカストロプ公が粛清されるまで自分が帝国に戻れる可能性は無いと思ったはずです。そして何よりもヴァレンシュタインのカストロプ公、リヒテンラーデ侯への恨みは強かったでしょう。彼に残されたのは帝国への報復しかなかった。そして彼が帝国に報復するには同盟の力を借りるしかない……」

「シトレ元帥とヴァレンシュタイン……、この二人が結びつくのは必然という事か」
「その通りです、ケスラー参謀長」
クレメンツとケスラーが顔を見合わせて頷き合っている。二人とも顔色が良くない。

虎視眈々、そんな言葉が浮かんだ。虎は己の野望を遂げるためじっと機会を狙っていた。しかし時と場所を得ず虎は帝国を去った……。そして新たな地で虎は大きな力を得ようとしている……。

「ヴァンフリート以降、シトレ元帥とヴァレンシュタインは二人三脚で戦ってきた、シトレ元帥が総参謀長を置かないのもヴァレンシュタインが総参謀長の役割を果たしてきたからだと思います。フェルナー中佐の言うとおり、今の反乱軍を動かしているのはヴァレンシュタインでしょう……」
クレメンツが話し終わると会議室に沈黙が落ちた。皆、顔を見合わせている。ややあってケスラーが口を開いた。

「だとすると反乱軍は今後もイゼルローン要塞を攻略しない可能性が有る」
「問題は反乱軍がどう動くかですが……」
「可能性は二つだな」
俺の言葉にケスラーとクレメンツがこちらを見た。

「一つはイゼルローン要塞を攻める、そして帝国軍を誘引して撃滅する」
「しかし、それは」
「効率が悪い、そう言いたいのだろう、ケスラー」
俺の言葉にケスラーが頷いた。そう、確かに効率が悪い。帝国軍は要塞主砲の射程内で反乱軍を迎え撃つとなれば効果的な損害は与え辛い
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