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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十三話 虚実
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した。しかし、あの戦いでロボス元帥は決戦に間に合わず面目を潰した……」

「覚えている、ヴァンフリート4=2に来た反乱軍は第五艦隊、そして第十二艦隊の二個艦隊だった。総司令官であるロボス元帥はあそこには来なかった。何度も戦闘詳報を読んだから覚えている……」

味方を収容して逃げる俺には状況を確認する余裕などなかった。何が起きたのかを知るため何度も戦闘詳報を読んだ。読む度に体が震えた、負けるとはこういう事なのかと思った。苦い思い出だ。

「面目を潰されたロボス元帥は第六次イゼルローン要塞攻略戦で焦りから不適切な命令を出し解任されました、解任の提案者はヴァレンシュタイン……」
クレメンツの声が続く。ヴァンフリート星域会戦を勝利に導いたのはヴァレンシュタイン、そして第六次イゼルローン要塞攻略戦でロボス元帥の解任を提案したのもヴァレンシュタイン……。

「……ロボス元帥は嵌められたと卿は考えているのか?」
「そうとしか思えません」
俺の問いかけにクレメンツが頷いた。

「有り得ない、総司令官を嵌めるなど……」
ケスラーが呻くような口調で呟いている。俺も同感だ、そんな事が有るとは思えない。
「卿の考えすぎではないか」
しかしクレメンツはそうではないと言うように首を横に振った。

「彼一人でやったわけではないでしょう、ヴァンフリートにヴァレンシュタインを派遣したのはシトレ元帥です」
「つまり、シトレ元帥とヴァレンシュタインが手を組んでロボス元帥を陥れた……」
声が掠れた。そんな俺をクレメンツが見ている、そして頷いた。

「第五次イゼルローン要塞攻略戦、ヴァレンシュタインが亡命した戦いですが、この時の反乱軍の総司令官がシトレ元帥です。あの二人はそこで出会っているのですよ……」
顔が強張る、ケスラーも顔が強張っている。有り得ない、有り得ない事だ。しかし……その有り得ない事を行ってきたのがヴァレンシュタインではなかったか……。クレメンツの声が続いた。

「小官はこう考えています。ヴァレンシュタインは両親を殺害された後、士官学校に入校しました。理由は貴族達への復讐と帝国の改革のためだったと思います。そのためには力が必要だと思ったのでしょう」
「……」

ごく自然に頷けた。俺も力が欲しかった。姉上を救い、皇帝になるために……。だから力を得るために軍に入った。俺もヴァレンシュタインも無力な存在だ、力を得ようと思えば考える事は同じだ。クレメンツの声が続く、ゆっくりと自分の考えを確かめながら話しているような口調だ。

「ですが彼は身体が弱かった。だから頂点に立とうとは思わなかった。自分と同じ望みを持つ人間を見つけ、その人物を助ける事で自分の望みを果たそうとしたのでしょう。ケスラー参謀長の事を知っていたのも協力者として仲間に引き
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