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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十二話 目的と手段
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失いかけている。

『ナイトハルト、気になることが有る』
アントンが浮かない表情で話しかけてきた。
「何だ、一体」
『反乱軍、いや、エーリッヒが次にどう出るかだ』

「……今度こそ反乱軍はイゼルローン要塞の攻略をするんじゃないか」
俺の問いかけにアントンが首を横に振った。
『とは限らない、リヒテンラーデ侯が死ぬ間際にブラウンシュバイク公に言った言葉が有る』
「……リヒテンラーデ侯?」

『エーリッヒがわざとイゼルローン要塞を取らなかったと侯は言ったんだ。イゼルローン要塞を取れば帝国が改革やむなしで一つにまとまる、だから敢えて要塞を取らずに帝国を分裂させようとしたと……』
「まさか……」
声が震えた。考えられない、そんな事が……。

『俺もまさかと思いたい。だが現状はリヒテンラーデ侯の言ったとおりだ、どうしても気になる。もしそれが事実ならエーリッヒの次の狙いは何か……』
アントンが俺を見ている。深刻な表情だ、かなり思いつめている。

「……イゼルローン要塞攻略は反乱軍にとっては悲願だろう、それを止める事が出来るのかな……。それにあいつは司令部参謀から艦隊司令官に転出した。反乱軍の作戦に関与できるのか?」
俺の問いかけにアントンは大きく息を吐いた。

『分からん、だが前回はイゼルローンを落とせたのに何もせずに軍を返した。エーリッヒはかなり反乱軍の上層部に信頼されているんだと思う。だとすれば作戦に関与してもおかしくは無い……』
「……もし、そうだとすれば厄介だな」
『ああ、厄介だ』

俺もアントンも、そしてギュンターも分かっている、エーリッヒは出来る。エーリッヒを嫌っていたシュターデンでさえそれを否定はしなかった。そのエーリッヒの口癖は“戦争の基本は戦略と補給”だ。目先の勝利には拘らない、戦争の目的を定め、万全の準備をしてから戦う。だとすれば……。

前回、反乱軍がイゼルローン要塞を落とさなかったことをもっと重視するべきなのかもしれない。亡命者だから、いやエーリッヒだからイゼルローン要塞に拘らなかった……。だとすればエーリッヒはかなり反乱軍に信頼されている、いやエーリッヒが反乱軍を動かしている可能性も有るだろう。亡命者にそんな事が出来るのかとは思う。本来なら有り得ない事だ、しかし……。

俺が考えているとアントンの声が聞こえた。
『もう一つ気になる事が有る。エーリッヒは何故カストロプの件を知っているんだ? 俺達はあの件をルーゲ伯に聞くまで知る事が出来なかった。だがエーリッヒは知っていた……、何故だ?』
「……」

アントンが俺を探るような表情で見ている。
『エーリッヒはカストロプ公が贄であることを最初から気付いていたんじゃないか』
「馬鹿な、そんな事が有り得るはずが無い」

『だったら何故
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