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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十二話 目的と手段
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、今は何を」
『領地に戻って徹底抗戦の姿勢を見せている。討伐軍が編成された』
「討伐軍? そんな兵力が有るのか?」
俺の問いにアントンは顔を顰めた。

『貴族達が連合して討伐軍を出す』
「はあ、なんだそれは。連中は反乱軍にぶつけるのだろう」
『あの爆破事件で身内を殺された貴族が大勢いる。その貴族達が復讐したいと言っているのさ』
吐き捨てるような口調だ、アントンは納得していない。

「ブラウンシュバイク公はそれを許したのか」
『許した。こちらは改革を如何進めるか、何の準備も出来ていないんだ。今の状態では貴族達を反乱軍にぶつける事は出来ない、少なくとも改革の理念と内容を貴族達に示さなければ……』
「……」
アントンの表情が沈痛なものになった。こんな顔をする奴じゃない、オーディンの状況は決してよくない。

『現状では小煩い貴族達が一人でもオーディンから居なくなってくれるなら大歓迎と言う訳さ。現実にクロプシュトック侯の反逆を放置できないと言う理由も有る』
「……だからと言って」

『連中、恐れているんだ。この件で平民達がテロに走るのを恐れている。徹底的に叩き潰して、平民達に恐怖心を植え付ける。それが目的だ』
吐き捨てるような口調だった。余程に嫌な思いをしたのだろう。貴族達はブラウンシュバイク公に詰め寄ったはずだ、その相手をさせられたのかもしれない。

「……大丈夫なのか」
俺の問いかけにアントンは肩を竦めるしぐさをした。
『さあな、鎮圧に時間がかかっても構わない、ブラウンシュバイク公はそう思っているようだ。その方が時間が稼げるからな』
「……」
溜息が出た。

『一ヶ月早かった……、あと一ヶ月あれば如何改革を進めるか、準備できたんだ……。おかげで今、後手後手に回っている。我々は改革をどう進めるか、検討に入ったところだが、事が事だ、貴族達に知られぬようにこっそりと行わざるを得ない、当然だが進みは遅い……。余計な事をしてくれたよ、クロプシュトック侯は……』

呻くような声だ。あの計画が上手く行けば、クロプシュトック侯の事件さえなければ、そんな思いがアントンにはあるのだろう。その思いは俺にも、ミューゼル提督にも有る。全く余計な事をしてくれた。

「……上手くやってくれとしか言いようがない、こっちはもう如何にもならないんだ。軍は戦争なんか出来る状態じゃない。指揮官達は皆頭を抱えている……」
俺の訴えにアントンの顔が辛そうに歪んだ。

『分かっている、公もそれは理解しているんだ。そして軍が頼りにならなければ皇帝の座がいかに危険かも理解している。必ず改革は行う、だからもう少し我慢してくれ』
「頼む」

溜息が出た。軍はもうどうにもならない。戦えない軍など軍ではない……。指揮官達は皆、自分達の存在意義さえ見
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