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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十二話 目的と手段
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う事だ」

言っている意味は分かる、しかし……。
「上手く行くのか? 仮にも黒狐と言われた男だ、ルビンスキーは一筋縄でいく男ではないぞ」
私の言葉にシトレとトリューニヒトが笑い出した。笑いながらトリューニヒトが口を開いた。

「上手くいかなくてもいいのさ、問題は帝国だ。帝国がどう受け取るかだ」
帝国がどう受け取るか? ホアンと顔を見合わせた、彼が少し考えるような風情を見せて話し出した。

「……中立の前提が崩れつつある、フェザーンがそれを見越して同盟に擦り寄っている……、そう帝国に思わせるという事か」
「そういう事だ、ルビンスキーは否定するかもしれん。しかし否定すればするほど帝国は疑うだろう。レベロ、ホアン、帝国はフェザーンの離反を受け入れられるかな?」

無理だ、先ず受け入れられない、トリューニヒトの話を聞きながら思った。彼の言葉が続く。
「先ず受け入れられないだろう。となれば帝国は自分達がフェザーンの中立を保障する力が有る、それを証明しようとするはずだ」
「つまり、戦争だな」

ホアンの言葉にトリューニヒトが頷いた。
「連中が何処から攻めてくるかは分からない。イゼルローンかもしれないしフェザーンかもしれない、しかしその戦いはフェザーンの帰属を賭けた戦いになるだろう」
「……政府に了承を取る必要は無いのか、事が事だぞ」

私の問いかけにトリューニヒトは首を横に振った。
「君の言うとおり事が事だからな、事前に説明するとフェザーンに漏れかねん。あくまで帝国軍を引き摺り出す事を目的とした軍の謀略として行う。フェザーンの独立はそのための手段だ」
「……」
「但し、いずれは目的と手段が入れ替わるかもしれん……」



帝国暦 486年 8月 6日 ミュラー艦隊旗艦バイロイト ナイトハルト・ミュラー



「ではクロプシュトック侯は……」
『そうだ、前回の戦いで息子を亡くしている。後継者を失った事、それがリヒテンラーデ侯の所為だと知った事が今回の爆破事件に繋がった』
目の前のアントンはやり切れないといった様な表情をしている。以前は頭部に包帯を巻いていたが今は無い。右腕は三角巾で釣ったままだ。

『皆言っているよ、エーリッヒの呪いだとね』
「……」
『無理もないさ、立て続けに皇帝が死んだ。皆フリードリヒ四世陛下もエルウィン・ヨーゼフ二世陛下もエーリッヒに殺されたと思っているんだ。当然だがリヒテンラーデ侯もね……』
「……」

アントンが遣る瀬無さそうに話す。呪いなどと馬鹿げているだろう、本当なら否定すべきなのかもしれない。だが俺は否定できない。艦隊の中でも同じような事を言っている人間が殆どなのだ。そして艦隊の現状を見ればまさに呪いとしか言いようのない状況だ。

「……クロプシュトック侯は
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