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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十二話 目的と手段
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けた。
「中立には二つのパターンが有る。一つは自ら強力な力を持ち中立を宣言する事だ。もう一つは周辺の国の勢力均衡を利用して自らの中立を周囲に認めさせる事……」
「フェザーンは後者だな」
私の言葉にシトレ、トリューニヒトが頷く。
「その通りだ、フェザーンは帝国と同盟の軍事的均衡を利用して中立を両国に認めさせ維持してきた」
「……」
シトレの表情が厳しくなった、トリューニヒトもだ。
「しかし、今、その均衡が崩れようとしている……」
「……」
今度はシトレに代わってトリューニヒトが話し始めた。
「軍事的に帝国が劣勢に立ったという事だけじゃない。帝国は今国内が極めて不安定な状態にある。或いは帝国は分裂する、崩壊するという事になるかもしれない」
「……つまり、帝国はフェザーンの中立を保障できなくなりつつある、或いは中立を保証してきた帝国そのものが存在しなくなる、そういう事か」
ホアンが呟くように吐く。それきり部屋が静かになった。皆顔を見合わせ黙っている。なるほど目の前の二人、いやヴァレンシュタインはフェザーンの中立が成り立たない事態が来ると見ているという事か……。
トリューニヒトがワインを一口飲んだ。そして話を続ける。
「フェザーンにとって帝国の崩壊は悪夢だ。帝国が崩壊すれば有力貴族、軍人達は独立し地方政権を作るだろう。彼らは自らの手で帝国の再統一を目指すはずだ。その時必要になるのが金だ」
「当然だろうな、軍備は金がかかるし戦争はさらに金がかかる。経済力の裏付け無しに戦争など出来ない。嫌と言うほど知っているよ」
「私も分かっている、顔を見れば軍事費を削れと言われるからな」
「私もだ、戦争屋と呼ばれて国家財政を考えていないと貶されるよ」
トリューニヒトとシトレが私の顔をニヤニヤしながら見た。
「仕方がないだろう、金が無いのは事実なんだ!」
憤然として言うとホアンが笑いだした。トリューニヒトとシトレも笑う。面白くない奴らだ。笑い終えるとトリューニヒトが口を開いた。
「彼らが簡単に金を手に入れようとすれば、当然だがその眼はフェザーンに行く。彼らは先を争ってフェザーンを自分のものにしようとするか、軍事的な圧力をかける事で金を毟り取る事を考えるだろう」
「……まるで犯罪組織だな」
「国家なんて多かれ少なかれそんなところは有るよ。いざとなったら同盟だって同じ事をやるだろう」
「他人事みたいに言うな、お前さんはその同盟の政治家なんだぞ」
トリューニヒトが肩を竦めて見せた。そして今度はシトレが話し出す。
「そうなった時、フェザーンが頼れるのは同盟だけだ」
「つまりヴァレンシュタインは……」
「フェザーンの中立、いや安全を保持したければ同盟寄りの姿勢を取れ、ルビンスキーにそう脅しをかけるとい
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