第五話 決意と恐怖
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何も見えない。
「……無事……か?」
弱々しく、かき消されそうな声。
それは隊長の声だった。
「隊……長?」
「お前は……いつも、ノロマだった。何度、言っても……何度、注意しても、そこだけは治らなかった……なぁ」
真っ暗だったグレイズのメインモニターに映像が流れ込んでくる。
そこには、モビルアーマーの鋭い尾にコックピットを貫かれ、宙に浮いているグレイズ・マイン────隊長の乗っている機体があった。
「隊、長?」
「全、小隊に、通達……」
今にも、途切れそうな隊長の声。
「臆すな。戦え……、これ以上……被害を出させるな、」
モビルアーマーはグレイズ・マインのコックピットに貫通した尾を引き抜き、先程と同じように前進した。
モビルアーマーはモビルスーツに目を向けることもなく、進行する。先程からそうだ。あのモビルアーマーはモビルスーツの攻撃を無視し、ただ、ひたすらに進行を続けている。
上官の話によれば、モビルアーマーの攻撃対象は生きた人間とエイハブリアクターを動力に稼働する機械らしい。でも、それならなんでこっちに攻撃をしてこない?
先程の攻撃。
グレイズ・マイン、正確にはジキールの搭乗するグレイズに攻撃をしてきたが、それは人間で例えると自身の周りに飛んでいる蚊を手で追い払うような行為だった。
要するに、攻撃をしてこないのは「攻撃」する必要がないから。先程の攻撃は攻撃ではなく、自身の周囲を飛んでいた虫を追い払おうとしただけ。
そう、それだけなのだ。
それでも、その攻撃を目にしたグレイズのパイロット達はモビルアーマーに恐怖する。モビルスーツはナノラミネートアーマーで覆われている。それを尾の一撃でもっとも分厚いコックピットを貫通し、貫いたのだ。畏怖して当然だ。
「クソォ……なんで、なんで!」
ジキールは、モビルアーマー目掛けて突っ込んだ。
「おい!待て、止まれ!」
「隊長の仇だッ!」
アックスを構え、モビルアーマーに攻撃を加える。
ガンッ。
アックスは弾かれ、グレイズは大きく態勢を崩した。
「この!この!この!」
それでも、グレイズは何度も何度もアックスを振り続けた。
依然とコチラを見ようともしないモビルアーマーはグレイズの攻撃を何事もないように受け続ける。
意味の無い攻撃だ。そんなので倒せるなら当の前に倒せてる。
グレイズはアックスを振り続ける。
振って、振って。
そして────アックスは砕け散った。
攻撃の手段を失った。
だが、彼は諦めなかった。
「この野郎ッ!」
武装を失ったグレイズは拳でモビルアーマーを殴った。
グレイズの拳には何の装備も付けていない。いわば素手の状態だ。それにも関わらず、ジキールはグレイズを操作し
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