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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十一話 口喧嘩
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話した時、彼は皇帝の寿命が帝国の不確定要因だと言った。それによっては別な選択肢が出るだろうと……。
人の寿命など分かるはずもない、一体何時の事だと思ったがこうも早く現実になるとは思わなかった。帝国はその現実に対応できずにいる。そして我々もその事態に追い付けずにいる。あっという間に世の中が動き始めた。急激に、独楽が回転するように動き我々は振り回されている。
「今回は私とホアンが反対して有耶無耶になったが、いずれまたイゼルローン要塞攻略論は出てくるだろうな」
トリューニヒト、ホアンが頷いた。シトレは渋い顔をしている。
「厄介なのはトリューニヒトへの反感から出兵論を唱えている人間が居る事だ。理性ではなく感情の問題だからな、始末が悪い」
「どういう事だ、レベロ」
「副議長兼国務委員長ジョージ・ターレル、法秩序委員長ライアン・ボローン。この二人がトリューニヒトに反発している、理由は分かるな」
シトレが横を向いてトリューニヒトを見た。トリューニヒトはウンザリした様な表情をしている。
「連中の魂胆は分かっている。イゼルローン要塞を攻略させる。成功すれば軍の方針を変更させたと言って自分達の功績を声高に言い募るのだ、失敗すれば私とシトレ元帥の責任を問うつもりだろう」
「連中にとってはどちらに転んでも損は無い。しかし国家にとっては……」
トリューニヒトが語尾を濁した。それを見てシトレが口を開いた。
「どちらに転んでも損だな。負ければ兵が大勢死ぬ、勝てば帝国領出兵が現実のものとなる」
トリューニヒトが大きく溜息を吐いた。この男らしくない事だ。
腹が減ったな、サンドイッチを一つ摘んだ。他の三人も思い出したようにサンドイッチを手に取る。暫くの間、皆が無言でサンドイッチを食べ続けた。
「実際のところ、どうなのだね? 帝国は混乱していると言うがイゼルローン要塞を落とせるのかな。あれは難攻不落なのだろう?」
ホアンの質問にトリューニヒトとシトレが顔を見合わせた。ややあってシトレが自分の考えを確かめる様な口調で話し始めた。
「確かに難攻不落ではある。しかし確証は無いのだが帝国軍の士気はかなり下がっているのではないかと軍情報部では見ているんだ」
「……では実際に要塞が落ちる可能性が有ると?」
「うむ、かなりの確率でな」
シトレとホアンの会話に皆気が重そうな顔をしている。馬鹿げている、何故我々がイゼルローン要塞の陥落を心配しなくてはならないのか……。
「帝国領への大規模侵攻か、それさえなければ要塞を取っても良いのだがな」
「いや、それは駄目だ、レベロ。要塞攻略はいかなる意味でも拙い」
シトレが首を横に振って否定した。
「例のカストロプの一件で帝国の統治力は酷く不安定になっている。そんなときにイゼルローン
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