最終章
最終節―全ての救い―
その心において強者、勝者
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ィレスクラの感情を理解するのにはその結果だけで十分だった。
「だから俺は弱者になった」
「――そっか、君は本当に救う気なんだね」
無防備になったウィレスクラの胸に蒼也は手を当てる。
生まれた瞬間から弱者であり、それでも勝者であることを強制された神を救う為に。
「『脆い骨子、弱い血潮、鍛える事を知らぬ体」
その身は脆弱。
「俺は本来弱者であり、俺は本来敗者だった」
だから分かったこともある。
「“仕方がない”と思えた。“仕様がない”と感じた」
諦められた。
残念がれた。
だからこそ、安心していた。
けれどお前は違うのだろう?
「お前は負けたかった。お前は勝者でなくなりたかった」
ならば、今その望みをかなえよう。
語るは結果。
願うは想い。
求むは敗北。
歩みは苦渋。
道は険しく。
これが、ウィレスクラが求める“救い”。
「今、ここでお前は敗者となる』」
その恐怖を安堵の心へ変えて。
その勇気を悲哀の心へ変えて。
その慟哭を静かな声へ変えて。
その眩しい道を少し暗くして。
その巨壁は高くに在り続ける。
これが、ソウヤが与える“救い”。
ウィレスクラという勝者を救うために、ソウヤは与える。
そこには“強き者”の宿命も呪いも存在しない。
そこには“弱き者”の呪いも宿命も存在しない。
これこそ“救いの文”。
「――力を失え、勝者。『お前を救おう』」
手が触れる場所から発光し出し、ウィレスクラは徐々に光へ包まれていく。
これは“死”ではない。
絶望で恐怖し、己を悲哀し、抗おうと慟哭し、暗闇に沈まないように、その“死を受け入れる”という巨壁を破壊しようとする。
そんな、苦しい終わりではないのだ。
彼に待っているのは今までの償いによる消滅のみ。
1つの世界と、10万もの人命を弄んだ罪を贖う為に必要な行為なのである。
「…償ったら、もう一度生まれて来い」
「そうしようかな。――あぁ、生まれるのなら次は…」
「人が良いな」。
そう言い残して、ウィレスクラの魂は消滅した。
残るのはウィレスクラの魂を宿していた器、そして――
「もう目覚めているのだろう」
「ふむ、流石にばれるか」
――本来その器に魂を宿していた“第一の全て知り全て能う存在”。
ウィレスクラの器が塵となって消え、それらがまた集まり1つの器となる。
そこに現れたのは、白髪の長髪を揺らす人間だった。
「――――」
「どうした、我が姿に…余りの“人間っぽさ”に驚いたか?」
蒼也の目の
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