最終章
2節―反逆決戦―
さぁ、反逆の旗を上げろ
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ソウヤ。
その響きだけで、僕はその人が自分と同じ世界の人だと理解した。
どうして戦えるのだろう、どうして立ち向かえるのだろう、どうして殺せるのだろう。
そんな思いばかりが募って、僕はどうしても知りたくなった。
魔物を、魔族を何故殺せるのか、と。
―彼は覚えていないだろうな、一般人に紛れて僕が質問したことを。
必死に王に頼み込み、僕は複数の護衛と共にソウヤが居るであろう場所に向かった。
訓練さえしない僕がソウヤと出会うことで、何らかの刺激になることを王も願っていたから僕を送り出したのだろう。
そして、僕は一般人の中に入り込みソウヤに聞いたのだ。
“どうして戦えるのですか、怖くないのですか”と。
彼はただ―儚げに―笑って、―震える手で―僕の肩を叩く。
「そんなの、俺が“後悔したくないから”だ」
言葉を聞いて、彼の儚げな笑みを見て、彼の震える手を感じて……僕は全てを察する。
怖いに決まっている、何も感じず戦っている訳がないのだ。
それでも、他人が傷付くのを見たくないと、他人を救いたいと彼は立ち向かう。
自分が―他人が傷付くことで―後悔したくないから戦う。
自分が―他人が恐れることで―後悔したくないから立ち向かう。
自分が―他人が震えることで―後悔したくないから殺す。
怖くても、辛くても、苦しくても、彼は強者だから“宿命”を背負っていた。
戦いたくなくても、立ち向かいたくなくても、殺したくなくても、護るべき人は弱者だから“呪い”を背負っていた。
儚くて、まるでガラス細工のように触れれば砕けてしまいそうな、そんな彼の背中を僕はどうしようもないくらい憧れた。
決してその背中は大きくなかったし、その背中は屈強でもなかったけれど、彼の背中は全てを背負っているように感じられたのだ。
人間らしく、それでも強く在ろうとする背中に……僕は勇気付けられる。
あぁ、結果は確かに僕の力を使わなくても終わった。
『勇者』として戦わなくても、周りの人々の力で魔王は倒されたし僕自身もそれで満足していた。
―それでも、僕にはまだやれることがある。
平和に戻り明るく過ごす人々の影に、彼らは何より強大な存在と戦おうとしていた。
その力に顔を落としてしまった人がいる。
なら、僕が彼に代わって“希望”を“勇気”を与えよう。
「行くぞ、熾天使」
“青”の光を纏い、僕は戦局を覆そうと動き出す。
――さぁ、反逆の旗を上げる時だ。
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