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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第172話 蝶の羽ばたき
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変。……本来なら大航海時代以前の時代にそのような先進的な知識や医療技術が存在していない世界に対して、そのような働き掛けを行えば、その後の歴史に間違いなく影響を与える事となる。
 ……この場合、おそらく医療技術や知識の進み具合が正史と比べると少し加速される可能性が出て来る。そう言う事。

 そして、その進んだ医療技術によって本来、その病で死ぬべき可能性のあった人間が生き延びる可能性が発生。その人間がまた新たな何かを為す可能性が有り、世界の進歩は少しずつ加速して行く事となる。
 当然、それは医療技術や知識にのみ限定された進歩と言う訳ではない。それ以外の有りとあらゆる事象に対して影響を与え、その事により更に歴史の流れは加速して行く事となる。
 ゆっくりと。しかし、確実に。

 流石にここまで大きな事をこのチンチクリンと名乗った男が為したとは思えない。しかし、例え僅かな接触であったとしても、本来、彼がもたらせる現代日本の知識や技術と言う物はこのハルケギニア世界に取ってはまったく異質な技術や知識。その技術や知識に、この世界の人々が接触する度に少しずつ蓄えて来た齟齬が徐々大きくなる事で、この匿名希望のチンチクリンが知っている歴史と、この今、俺が暮らしているハルケギニア世界の歴史に狂いが生じて来ているのではないか、と言うのが俺の仮説。
 それに、そもそも論として此奴が前世の記憶を持ったまま転生させて来たのが、這い寄る混沌に因る悪意だと考えるのならば、彼奴が何の見返りも要求せず、そのような美味しい話を用意するとは思えない。表面上は確かに何の見返りも要求していないように見えたとしても、それ自体が既に罠。今回の場合はこのバタフライ効果を発生させるのが目的である可能性も大きい。
 何故ならば、何の変化もない……過去から決まりきった未来に到達する歴史よりは、何が起きるか分からないカオスに満ちた未来の方が奴の嗜好には合っていると思われるので。

 以上、説明の終了。
 しかし――

 石造りの回廊に小さく響く笑い。それは当初の押さえられた冷笑の類から徐々に大きく成って行き……やがて哄笑へと変わる。
 そして――

「御説ごもっとも。確かに、歴史を歪めたのは俺の方かも知れなかったな」

 哄笑から嘲りの含まれた笑いへと層を移した匿名希望のチンチクリンが、そう笑いの合間に呟くように言った。

「しかし、それはもういい」

 ここまで変わって仕舞った歴史では最早、原作の流れなど何の役にも立たない事は俺にも理解出来るからな。

「そもそも最初は俺の能力アップの時間をどう稼ぎ出すか、そちらの方が重要だったんだが」

 貴様の無駄話の御蔭で十分な時間を稼ぎ出す事が出来たよ。
 原作? 何を訳の分からない事を言い出すのだ、この道化は。目の前に
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