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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十話 混迷
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頭を下げている、そしてそのまま上げようとしない。その事が無性に悲しかった。夫の肩に縋りついた、夫が私の背に手を回してくる。暖かい手だった、その事が嬉しかった。きっとこの手が私を守ってくれる、守りきれない時は運命だと受け入れよう、決して夫を恨むようなことはすまい……。



宇宙暦 795年 8月 4日  ハイネセン  最高評議会ビル   ジョアン・レベロ



自由惑星同盟最高評議会は十一名の評議員から構成されている。
最高評議会議長ロイヤル・サンフォード
副議長兼国務委員長ジョージ・ターレル
書記トーマス・リウ
情報交通委員長シャルル・バラース
地域社会開発委員長ダスティ・ラウド
天然資源委員長ガイ・マクワイヤー
法秩序委員長ライアン・ボローン
人的資源委員長ホアン・ルイ
経済開発委員長エドワード・トレル
国防委員長ヨブ・トリューニヒト
そして財政委員長である私、ジョアン・レベロ

今日は緊急の会議が開かれている。帝国で起きた皇帝暗殺事件、この事件の詳細を知るためだ。説明者はトリューニヒト国防委員長、皆彼の説明を神妙な面持ちで聞いている。幼帝が僅か即位二ヶ月で暗殺など尋常な事ではない。皆が今帝国で何が起きているかを知りたがっている。

「では今回のテロ事件は反政府活動ではなく、クロプシュトック侯の個人的な恨みによる犯行だというのだね。政治的な意味は無いと」
「その通りです」

トリューニヒトがサンフォード議長の質問に答えている。自信に溢れた姿だが、その答えのほとんどはヴァレンシュタインからシトレへ、そしてトリューニヒトへと伝わったものだ。私もホアンも知っている事だが、初めて聞くような顔をして聞いている。時折相槌を打ったり、驚いたり、面倒な事だ。

「なるほど、よく分かった。それにしても短期間の間に良く調べたものだ」
サンフォード議長の称賛にトリューニヒトが満面の笑みを浮かべた。それをボローン法秩序委員長が忌々しそうな表情で見ている。

例のスパイ事件で面子を潰されたと思っているのだろう。そしてあの事件以降、軍はヴァンフリート、イゼルローンで大勝利を収めている。当然だがトリューニヒトの政治的地位は高まった。益々面白くないに違いない。

「次の皇帝が誰か分かるかね、国防委員長」
問い掛けたのは副議長兼国務委員長のジョージ・ターレルだ。意地の悪い表情をしている。この男もトリューニヒトに良い感情を持っていない。次の議長職を狙っているのだろう、予測が外れれば大声で言いふらすに違いない。嫌な男だ。

「ブラウンシュバイク公爵家か、リッテンハイム侯爵家から出るとは思いますがどちらとはまだ言えません。帝国は今国内が不安定な状態にあります、両家とも皇帝を出すことが必ずしも自家の利益になるとは考えていない
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