三話 貧民街
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。でも、それら全てを肯定することも出来なかった。
そして、その言葉は俺に向けられたものではない。ここには居ない誰かに向けられた言葉だ。
「フェルト……お前は────」
「あれ?
アルトリアの姉ちゃんは?」
アルトリア。あぁ、エミリアの事だ。
エミリアの名前を伏せる為にセイバーの真名の使わせてもらったんだ。俺は後ろに居るはずのエミリアに振り返る。
「あれ?」
後ろには誰も居なかった。
「もしかして、途中ではぐれたとか?」
「おいおい、嘘だろ。ここを見て回りたいつったのはあの姉ちゃんなのによぉ」
フェルトは自身の髪をくしゃくしゃにかき回し。チッと舌打ちした。
「ここら辺は迷路みたいになってるから一度、迷子になっちまうとなかなか抜け出せねぇぞ」
「マジか、それは困ったな」
「シロウの表情の変化って少ねーな。その顔からするに困ったようには見えねぇ」
「え。結構、本気で困ってるんだけど」
「なら、もっと表情に出せよっと」
フェルトは近くに置いてある酒樽の上にジャンプし、家の天井に飛び移った。
それは、とても軽々しい軽快な動きだった。
「私は上から探すよ。シロウは下から探してくれ」
「おう、任された。
てか、ありがとな」
「何がだよ?」
「いや、エミ……アルトリアの迷子探しに付き合ってくれて。元々はアルトリアが、ここに来たいって言ったのにその本人が、迷子になるって笑えないよな」
「いいよ。アタシが、好きでやってんだ。それに、アルトリアの姉ちゃんは金持ちぽいし、助けてくれたお礼に宝石とか金とかプレゼント!的な展開を作ってくれたんだ。アルトリアには感謝してるぜ」
ヒッヒッヒと悪い大人の顔をするフェルト。
まぁ、そんな展開にはならないと思うけど後で俺からのお礼として大判焼きをあげよう。冷めてるけど味は保証する。
「じゃ、行くか」
「あぁ、それと見付けても見付からなくても日が落ちてきたらここで落ち合う。それでいいな?」
「解った。それまでには見つけてみせる」
フェルトの言っていた通り、この貧民街は複雑な迷路だった。
左右の分かれ道。右を進めば、新たな分かれ道。左に行っても新たな分かれ道で、これってもしかして……。
「俺も、迷子になっちゃった」
迷子になる前に、さっき通った道に戻ろうとしたけど遅かった。
似たような景色、似たような分かれ道に翻弄され、迷子のアルトリアを探していたら俺も迷子になった。要するに、ミイラ取りがミイラになったという訳だ。
「って、そんな自己分析してる場合じゃない」
今は、迷子から脱する方法を考えねば。
といっても。
左右を見渡して、あるのは分かれ道。
鬼が出るか蛇が出るか……。
人間という生き
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