三話 貧民街
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自身って事はそれ以外の奴は持ってるって事だ!」
そう言うとフェルトは俺を見つめ。
「はい?」
「いや、変な身なりだけどアンタは金持ちには見えねぇな」
っと言い残し、フェルトはエミリアの方に歩み寄った。
なんでさ。いや、まぁ、そうだけど。金持ちでもなんでもないけどそんなすぅーっと言われると……悲しい。
……。
………。
……。
辺りを見渡しても、あるのは寂れた木造の家ばかり。歩いても歩いてもその風景は変わることは無かった。行き着く先は何処で、一体此処はなんなのだろう?
貧民街。
その名の通り、貧しい民の街。
そこで暮らしている人達は貧しい生活を送っている。人で溢れ、活気に満ち溢れていた昼間の大通りとは大違いだ。
「シロウのあんちゃんはこういう所に来るのは初めてか?」
フェルトは周りをチラチラと見渡していた俺を見て言った。
「あぁ、まぁ、そうだな」
「汚ねぇ所だろ。何もねぇし、ここに居る奴らはクズばっかだ」
「そういう言い方はないんじゃないか?」
ここの仕組みをよく知らないけど、フェルトの発言に俺は少し苛立ちを覚えた。
「ホントの事だよ。ここに居る奴らの半分は「ここ」でしか生きていない悪人くずれとか。昼間から飲んだくれてる暇人やらなんやら」
フェルトは平然とこの貧民街の事を語っている。
確かに、周りをよく見ると賭け事をしながら酒を飲んでいる奴らが目立つ。でも、それでも、この貧民街に住む仲間をそんな卑下するような言い方はよくない。歳上としてここは一言、言っておくべきだ。
「なぁ、フェルト。お前もここに住んでるんだろ?
その言い方は酷いんじゃないか?」
「酷くねぇよ。コイツらはクズの中のクズだ。シロウもここで生活すりゃあ分かるよ。コイツらが、どうしよもないクズってさ」
「それでもだ。あの人達だって、生きようと必死なんだ」
そう言うと、フェルトは重い溜め息を付いた。
「あのなぁ、シロウ。アイツらは生きようと必死なんじゃない。生きていることを誤魔化すのに必死なんだ」
生きていることを……誤魔化す?
「ここに居る奴らの大半は何の努力もしてこなかったクズだ。労力せずして生きていくことは出来ない。コイツらは生きていくことしかしてこなかった」
「何が、言いたいんだ?」
「つまりだ。コイツらは何もしてこなかった連中だ。富を得ようと努力せず。財を得ようと努力せず。名声を得ようと努力しなかった」
フェルトの言葉は深く、重い。
俺は聴いているだけで、目を回しそうで、気分が悪くなってきた。
「何の努力もせずして、富は得られない。得るためには、それ相応の対価を支払わなければならない」
フェルトの言っていることは全て正しかった。否定することなんて出来ない
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