三話 貧民街
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その視線、少女のどことない言葉が俺の心を締め付けていたモヤを取り払った。
「そうか?
俺からすれば君の服装も変わってるよ。ていうか、露出多いぞ……」
「そうか?動きやすくていいんだけどな。てか、兄ちゃん。目元、赤いぞ?もしかして泣いてたのか?」
「な、泣いてなんかない。目にゴミが入ったんだ」
俺は目元を擦り、誤魔化す。
「その発言が、その行動が、おもいっきしさっきまで泣いてたって物語ってんだが?」
「うるさい。泣いてなんかない。これでこの話はおしまい。はい、チュンチュン」
「んだ、そのチュンチュンって?
なんか、妙にウゼェー」
「はいはい、お口ムーミン」
「さっきから、なんか、ウゼェ!?」
っとたわいない会話をしていると「シロウーっ」と俺を呼ぶエミリアの声が聴こえてきた。
「もう、急に走るからビックリするじゃない」
「ごめん。なんか、無性に走りたくなってさ」
っと適当に返すとエミリアは不機嫌そうな顔をする。本音を言ったら余計に不機嫌になるだろうし、今はそういうことにしておこう。
「それで、この娘は?」
「あぁ。さっき、会ったんだけど……そういえば、名前を聞いてなかったな」
いかんいかん。俺としたことが。
「えっ。初対面なの?」
「んだよ。白の姉ちゃん?
アタシとこの兄ちゃんが知り合いだと思ったのか?」
「白の……姉ちゃん。私って、そんなに白いかな。じゃなくて、うん。遠目から見ててそう思ったんだけど本当に知り合いじゃないの?」
「そうだよ。さっき初めて会った、初対面だ」
少女が、そう言うと「うわっ。やっぱり、シロウって凄い」とエミリアは言葉を零した。
「ん、どこが凄いんだ?」
「そりぁ、アレだろ。さっき、兄ちゃんが泣い────」
「はーい。お口ムーミンしましょうねー」
「んんっ!?」
慌てず、冷静に少女の口を塞ぐ。
「どうかしたの?」
「いやー。この娘、風邪気味らしくてさ。クシャミしそうだったから俺の手で塞いでるだけだよ」
「そ、そうなんだ。私には、そうは見えないけと」
「そういうお年頃なんだよ」
っと無茶苦茶な解釈で誤魔化そうとしていると。
「痛てっ!?」
女の子は俺の指に噛み付いてきた。
「イタイイタイ!分かった!
離すから噛むの止めろ!」
そう言うと女の子は徐々に噛む力を弱めていき、俺も手を離した。
「うわぁ……血が出てきた」
「へっ。そんなの唾付けときゃ治んぜ」
なんか、発言と仕草が妙に男の子ぽい。
「それで、貴女のお名前は?」
エミリアはそう言うと。
「人の名前を聴くときは、まず自分から名乗るのが礼儀だろ」
女の子は堂々とそう言った。
そう言われるとそうだ。なら、俺
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