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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十九話 波紋
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帝国暦 486年 8月 2日  イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル



「なんと仰られました」
『遠征は中止となった』
遠征は中止……。どういう事だ、計画がばれたのか? 突然の通信、人払いの要請、そして遠征の中止……。私室のスクリーンに映るオフレッサーは沈痛な表情をしている。何か嫌なものが腹の中を動いているような感じがした。

『オーディンで陛下が亡くなられた、リヒテンラーデ侯もだ』
「……ま、まさか、真でございますか」
『詳しい事は分からぬがブラウンシュバイク公邸で行われたパーティに出席されたところ爆弾テロに遭われたらしい。他にも犠牲者がかなり出ているようだ、オーディンは大変な騒ぎらしいな』

爆弾テロ……。ブラウンシュバイク公が自ら手を下した? いや、有り得ない。それでは何の意味もない。俺達とクーデターを行った方が遥かに状況は良くなるはずだ。では本当にテロが起きたのか……。計画がばれなかったのは幸いだ。しかし平民達の不満が爆発した、次の標的は……。

「……犯人は分かっているのでしょうか」
『いや、オーディンからの知らせでは未だはっきりした事は分からんと言っていた』
はっきりした事は分からない、……或る程度の目星は付いている、そういうことだろうか。

『どうした、顔色が悪いが』
「いえ、これから先どうなるかと思うと……」
『そうだな、正直先が読めん、厄介な事になった』

オフレッサーが溜息交じりに言葉を出した。全く同感だ、クーデターへの道筋を付けた。これなら帝国を再生の方向へ進める事が出来るはずだった。それが一瞬で潰えた……。考える時は長く潰える時は一瞬か……。上手くいかない、思わず溜息が出た。

『だがこれで勝算の少ない、いや言葉を飾っても仕方ないな、勝ち目の無い戦いをせずに済む』
「確かに、そうです」
オフレッサーはほっとしているようだ。一つ難問を切り抜けたと思っているのだろう。問題はこの後、帝国が改革へ踏み出せるかだ。貴族達の反発が今回のテロでどう変化するか、あるいは変化しないのか……。

『俺はオーディンに戻る、卿もオーディンに戻れ』
「承知しました。グライフス駐留艦隊司令官、シュトックハウゼン要塞司令官には小官からお伝えしますか?」
俺の問いかけにオフレッサーは首を横に振った。

『二人には軍務尚書閣下から連絡が行くはずだ、卿は何もしなくて良い』
「はっ、部下達に陛下が亡くなられたことを話しても宜しいのでしょうか」
『構わん、今更隠しても仕方がない事だ、直ぐに分かる。ミューゼル中将、オーディンで待っているぞ』
「はっ」

オフレッサーとの通信が終わるとケスラーとクレメンツを呼んだ。五分ほどでケスラーが、そしてクレメンツが部屋に入ってきた。ケスラーが落ち
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