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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十九話 波紋
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ください、訓練の一環だと思えば良い事です。下級司令部の都合を上級司令部が気にする事など滅多に有りませんから」
座りながら答えるとシトレがクスクス笑い出した。

『相変わらずだな、君は。私はもう慣れたから良いが、君の幕僚達は皆困っているようだ』
「皆の気持ちを代弁しただけです。感謝されると思いますよ」
シトレが耐えきれないといったように大きな声で笑い出した。チュン参謀長は天を仰いでいる。なんでそんな事をする、俺は皆の気持ちを上に伝えたんだぞ。握りつぶした方が良いのかね、その方が問題だと思うんだが。

『本題に入ろう、一昨日オーディンで政変が有った。エルウィン・ヨーゼフ二世、国務尚書リヒテンラーデ侯が殺された』
艦橋に声なき驚愕が溢れた。皆顔を見合わせている。幼帝エルウィン・ヨーゼフ二世が即位してから未だ二ヵ月ほどしか経っていない。皆が驚くのも無理は無いだろう。

『驚いていないようだな』
「驚いていますよ、予想外に早かった……。次の皇帝は決まりましたか」
俺の言葉に皆がぎょっとしたような表情を見せた。嘘じゃないぞ、俺はもう少し持つと思ったのだがな。手を下したのはブラウンシュバイク公か、或いはリッテンハイム侯か……。彼らがやったのなら次の皇帝が決まるのは早いはずだ。問題は反政府主義者が犯人の場合だ、この場合は結構揉めるだろう。

『いや、まだ決まっていないようだな、揉めているのかもしれん……。犯人はクロプシュトック侯との事だ。ブラウンシュバイク公爵の屋敷で行われたパーティに爆弾を仕掛けたらしい。他にも犠牲者が大勢出ているようだな』

「なるほど、クロプシュトック侯ですか……。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は無事なのですね」
クロプシュトック侯事件か……、それが有ったな。どうやら原作同様息子が死んだらしい、殺したのは多分俺だな……。

『無事だ。ブラウンシュバイク公が、或いはリッテンハイム侯かもしれんがクロプシュトック侯の後ろで糸を引いていた、そういう事は有りえんかね?』
「有りえませんね、糸を引いていたのなら皇帝はもう決まっているはずです。それにクロプシュトック侯が彼らの手先になるなどあり得ません。……クロプシュトック侯の事ですがそちらに情報は無いのですか?」

どうやら無いらしい、俺の問いかけにシトレは幾分バツが悪そうにしている。
『クロプシュトック侯爵家がかつては皇后を出したことも有る名門貴族だという事は分かっている。ここ三十年ほどは全く目立った動きもない事も。君は何か知っているのかね』

やれやれだな、三十年以上前の事だし両国は交流が無い。それにあの当時の帝国は後継者問題で混乱していたはずだ。情報が錯綜していたとすれば仕方が無いのかもしれん。

「クロプシュトック侯は後継者争いに関与して失脚した
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