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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十九話 波紋
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になるだろう。
ブラウンシュバイク公か……、改革には反対しなかった。あの尊大な男が、とも思ったがあれは周囲へのポーズなのかもしれない。リッテンハイム侯も公に負けず劣らずの尊大な男だが、果たして真の姿はどうなのか……。虚飾を剥ぎ取れば案外聡明な男なのかもしれない。少なくともフリードリヒ四世死後、帝位を望まなかった事は評価して良い。
宮中に味方が欲しい、切実にそう思った。能力があり、信頼できる味方……。今ならヴェストパーレ男爵がヴァレンシュタインにリメス男爵家を再興させようとした気持ちが痛いほどに分かる。男爵は間違いなく正しかった。
もしヴァレンシュタインが、いや彼と同じ能力を持つ人間が今オーディンに居たらどうだろう、自分の味方だったら……。政治、軍事に優れた見識を持つ彼ならブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を説得して積極的に改革を実施してくれるかもしれない。彼が政治面で主導的な役割を果たしてくれるなら俺は軍事に専念できる……。本当ならそうなるはずだった、そして俺の隣にはキルヒアイスが居たはずだった。
トントンとドアを叩く音が聞こえた。入室を許可するとミュラーだった。表情が硬い、おそらくはオーディンのフェルナーから連絡が有ったのだろう。
「オーディンからの報せか、ミュラー准将」
「御存じなのですか、ミューゼル提督」
「陛下とリヒテンラーデ侯がテロに遭われたという事は知っている。御二方が無くなられたという事もだ」
「他には」
「オーディンへの帰還命令が出た。それだけだ」
俺の言葉にミュラーが何度か頷いた。
「小官はもう少し詳しい事情を知っています」
「……」
「現在、ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯が今後の事について調整をしているとのことです」
調整……。誰が皇位を継ぐかという事か、ここで権力争いをするようだと……。
「それは誰が皇位を継ぐかという事か、ミュラー准将」
「それも有りますが、どのような形で改革を実施するかについて話し合っているようです」
ミュラーの言葉にケスラーとクレメンツが俺に視線を向けた。二人とも驚いたような表情をしている。どうやら二人は協調体制を取るらしい。悪い事ではない、帝国の二大貴族が協力するのだ。それなりに周囲に影響は有るだろう。
リッテンハイム侯は愚物では無かったという事か、或いはそれほどまでに危機感が強いという事か……。テロが有ったのだ、そちらかもしれない。とにかく、彼らが改革を実施するならそれに協力する事だ。クーデターは潰えた、しかし協力体制まで無になったわけではない。これからもミュラーとフェルナーには連絡を密にしてもらわなければならない。
「フェルナー中佐からの伝言です。計画は潰えたが我らの関係が途切れたわけではない、これからもミューゼル中将と
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