暁 〜小説投稿サイト〜
強欲探偵インヴェスの事件簿
捜査開始
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
無い。一部の店の商品棚に気付かれにくく紛れ込んだりはしているが、余程の玄人かその物品が目的で来ないとバレないようになっている。扱っている商品と言えば、暗殺者が使うような強力な毒だったり、効き目の強すぎる媚薬や自白剤、出所の怪しい宝飾品や武器、防具等。輸入が禁止されているハズの品物なんてのもチラホラ。限りなく黒に近いグレーゾーンの商品が、このマーケットの取扱品なのだ。

「よぅ、インヴェスの旦那。今日も媚薬かい?」

「いや、今日は仕事でな。『梟の森』に用がある」

「成る程、気ぃ付けてな」

「ケッ、今更ここいらで俺に喧嘩売るバカがいるのか?」

「違えねぇ、いらねぇ心配だった」


 道端に座り込んで酒を煽っていた男に声をかけられたインヴェスだったが、男とは顔見知りである。それにこの男、浮浪者に見えるがこのマーケットの見張り番でもある。グレーゾーンの商品を扱うだけに、店の主や客は脛に疵持つ連中が多い。取り締まりで衛兵がやって来る等日常茶飯事だ。そこでこの男が通りの入り口で座り込み、怪しげな動きを掴んだら警報を発しながら侵入者を引き留め、逃がす時間を稼ぐのだ。必然的に裏の世界の有名人とは知り合いになる。インヴェスは表でも裏でも有名人なのだが、裏ではちょっとした顔役位には知られていたりする。そんな彼が軽い足取りで向かっているのはマーケットの更に奥。スラムには珍しい、石造りの5階建ての建物だ。重厚そうな色合いのドアにはカッと目を見開いた梟の彫刻が施されており、不気味な雰囲気を高めている。インヴェスは躊躇う事なく、その不気味なドアを開けて中に入る。





 中は薄暗い灯りに照らされたカウンターバーだった。立派な口髭を貯えたバーテンダーがグラスを磨いており、カウンターの隅では厳つい見た目の男達が酒を飲みながらインヴェスにチラチラと視線を送っている。インヴェスは構うことなく、バーテンダーの前に腰掛けた。

「らっしゃい、ご注文は?」

「マタタビを浸けた珍しいリキュールがあると聞いたんだが?」

「生憎と今は切らしてるな」

 バーテンダーの素っ気ない言葉に対して、インヴェスは小さいメモ用紙と、小さな巾着袋をカウンターに置いた。ガチャリという音を聞く限り、巾着の中身は金のようだ。

「倉庫をよく探せば1本位はあるんじゃねぇか?」

「……見て来よう」

 ニヤリと笑うインヴェスに根負けしたのか、バーテンダーがカウンターを出て上へと上がっていく。5分もしない内に戻ってくると、そのバーテンダーはボトルを手にしていた。

「一人でゆっくり味わいたいんでな、個室を借りられるか?」

「あぁ、2階の一番奥の部屋が空いている」

「んじゃ、遠慮なく」

 インヴェスが立ち上がろうとすると、バーテ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ