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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十七話 クーデター計画
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痛い問題だ、軍の士気が上がらない、艦隊の維持が難しいほどに士気が下がっている。

厄介な事になりつつある。軍は艦隊の維持が難しいほど弱体化している。つまり兵達は銀河帝国のために命を捨てる事に疑問を感じ始めている、そういう事だ。帝国は国家としての尊厳と統制力を失いつつある。

そして愚かな事に貴族達の間にはそれを歓迎する空気が有る。軍の力が弱ければ政府の力が弱まる。政府の力が弱まれば貴族達の力を無視し辛くなる、そう見ているのだ。

そしてそれはリヒテンラーデ侯だけではなく、わしやリッテンハイム侯への牽制でもある。自分達を無視することは許さない、そういう事だ。貴族制度の存続も帝国有っての事、帝国が揺らげば貴族制度も揺らぐという事を理解していない。

政権を安定させ、貴族達を抑えるためには軍の協力が要る、精強な軍の協力が……。そのためにはやはり改革が必要となってくる。だがそれをやれば貴族達が反発するのは必至だ。問題は貴族達に勝てるか、という事だ。

軍が今自由に動かせるのはオフレッサー率いる三万隻、ミューゼル中将率いる三万隻、合わせても六万隻だ。ブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家の持つ兵力と合わせても約十二万隻。一方の貴族達は二十万隻は擁するだろう……。

「エーレンベルク、シュタインホフ元帥の話ではオフレッサー元帥率いる艦隊の士気はどうにもならぬらしい。オフレッサーは今回の遠征に全く勝算を持てずにいるようだ。唯一の頼みはミューゼル中将の艦隊らしいが、それが駄目なら遠征を取りやめるかもしれんと言っていた」

「残念だがミューゼル中将の艦隊も当てにはならん。わしの所にいるフェルナー中佐がミューゼル艦隊の分艦隊司令官ミュラー准将と士官学校以来の付き合いでな、准将はどうにもならんとぼやいているそうだ」

リッテンハイム侯が顔を顰めた。そして強く肘掛を叩く、バチンという音が部屋に響いた。
「では遠征は取りやめか……。勝つか負けるかはっきりしてくれれば手の打ちようも有るが、取りやめとは……。一番始末が悪いな」

確かに始末が悪い……。勝てば政権の安定度が増す。つまり今しばらくはリヒテンラーデ侯に政権を委ねておけるだろう。こちらとしては様子見が出来るわけだ。リヒテンラーデ侯に改革の口火を切らせるか、或いは平民達に圧力をかけさせるか、状況を見ながら判断すればよい……。

逆に負ければリヒテンラーデ侯は失脚、いや没落する。多少は平民の不満も晴れるだろう。改革案もお茶を濁すとは言わんが、貴族達にも受け入れやすいものに出来るかもしれん。もっとも戦死者の多寡にもよるだろう。それ次第では平民の不満はさらに高まる可能性は有る……。どうなるかは分からない、だが進むべき方向性は見えてくるはずだった。

コンコンとドアを叩く音がした。視線
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