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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十七話 クーデター計画
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は十メートル四方ほどの小さな部屋だった。薄暗い部屋で小さな丸いテーブルと椅子が幾つかあるだけだ。主に密談用に使っている、防音装置が施され盗聴器の有無の検査も日々行われている。この部屋には呼ばれるまで誰も入ってこない……。
部屋に置いてあるグラスとワインをテーブルに置いた。ワインをグラスに注ぐ。向き合う形で椅子に座ると早速侯が話しかけてきた。余談無しだ、リッテンハイム侯も追い詰められている……。
「これからの事だが、考えは決まったかな」
「……決めかねている」
「……公は革命が起きると思われるか?」
顔が強張るのが分かった。“馬鹿な”と否定したかったが出来ない。侯の顔も引き攣っているのが分かった。
「リヒテンラーデ侯は馬鹿げたことをしたが、無能とは思わん。その侯が革命を恐れてカストロプ公を利用しようとした……」
わしの言葉にリッテンハイム侯が頷いた。そしてこちらの顔色を見定める様にじっと見詰めた。
「正直に答えて欲しい、公は改革に反対か?」
「いや、ここまできたら何らかの改革をせねばなるまい。ただ……」
「ただ……、ただ何処まで改革を行って良いか決めかねている、か……」
その通りだ、侯の言葉に頷いた。侯も頷いている。お互い未だワインには口を付けていない……。
「侯はカール・ブラッケ、オイゲン・リヒターを知っているか?」
「知っている。改革派として有名だからな」
カール・ブラッケ、オイゲン・リヒター、どちらも元は名前にフォンが付く貴族だった。だが平民達の権利を拡大し社会の不公正を無くすを主張し、改革派として活動を始めた。その時に名前からもフォンの称号を取っている。
「彼らと内密に会った。そして彼らの考える改革案、その草案を貰ったのだが……。とてもそのまま受け入れる事は出来ん。あっという間に暴動が起きるだろうな」
溜息が出た。あの草案の事は考えたくない、しかし無視することはもっとできない。
「考える事は同じか……」
「?」
「私も彼らに会った。改革案を貰ったよ」
思わずまじまじとリッテンハイム侯の顔を見た。侯は苦笑している。釣られたようにわしも苦笑していたが苦笑していたのは長い時間ではなかった。
「平民達の不満は高まっている、その事に貴族達も苛立っている……」
「平民達は現状に不満を持ち、貴族達は現状を維持しようとしている……、そういう事だな」
わしの言葉をリッテンハイム侯が別な言葉で言い換えた。また溜息が出た。侯も同じように溜息を吐いている。帝国の二大貴族が薄暗い部屋で溜息を吐いて現状を憂いている。ちょっと前なら有り得ないことだった。一体どういう事だろう。
「ブラウンシュバイク公、軍の事、聞かれたかな」
「士気が上がらぬという事か」
リッテンハイム侯が頷いた。こいつも頭の
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