第四話 父さん
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一言で言うなら変な奴だ」
「変な奴?」
「何、考えてんのか分かんねぇし。スゲェ飯も食ってたな。戦闘に関しちゃアイツに敵う奴はいなかった……」
なんか、色々と言ってるけど。
どれもパッとしない。
「他に、ないの?」
「他……つわれてもなぁ。アイツ、あんまり喋る奴でも無かったしな」
頭を悩ますユージン。
俺の父さんってそんな特徴、無かったのかな?
そうなると俺も特徴が無いってことになるけど。
「言葉にすんのは難しいな。まぁ、言葉じゃあ言い表せないくらいスゲェ奴だったってことだ!」
「要するに解らないって事だね」
「そ、そんな訳ねぇだろ!
ホント、言葉に出来ねぇんだよ!」
なんて都合のいい言葉だろう。
母さん……なら、詳しく教えてくれるだろうか。
母さんは何も言わなくても父さんの事を話してくれる。好物とか趣味とか色々、教えてくれた。
でも、直接的な父さんの事は余り話してくれなかった。
だって、あんな顔されたら。
話の続きを聞こうなんて思えないよ。
「父さんって、なんなんだろ」
父親ってなんなんだ?
何者なんだ。一体、どんな人なんだ?
ミカヅキってなんなんだ?
家の近所に住む双子の姉妹、ユージン、さっきの真っ黒オッサン。この人たちは父さん「ミカヅキ」を知っている。
実際に会話をして、食事をして、仕事したりしていた。
だから、ミカヅキを知っている。
でも、俺は会ったことすら無いんだ。
ミカヅキを知っている人は俺の事をミカヅキそっくりだ、と言ってくる。
知らないよ。俺は話したことも会ったことも接したことも無いんだ。なのに、それなのになんでお前らは知ってんだよ。息子の俺が知らないことをなんでそんなに知ってんだよ。
知りたいとは思わない。
でも、俺は父さんを知らない。
なんなんだ。なんで、なんで、俺は父さんなんて知らない。なら、知らないままでいいじゃないか。
なのに、なんで、こんなに。
「あ、一つ言えることがある」
ユージンは閃いた表情で。
「アイツは糞馬鹿野郎だ」
「……え?」
「人の言うことは聴かねぇし。
命令してもうんともすんとも言わねぇ。オルガの後ばっかり追ってこっちなんて目もくれねぇ。人が散々心配したってのに何とも思わねぇクソ野郎だ!」
「……?」
「まぁ、要するにミカヅキの野郎はバカでマヌケでクソ野郎で────誰よりも優しかった」
「やさし、かった……?」
「あぁ、仲間に対しての優しさなら誰よりも、な」
誰よりも、優しかった。
ユージンはそう言った。
でも、俺はその優しさを知らない。
「知らないよ、そんなの」
「たりめぇだ。テメェは会ったこともねぇんだからな」
「……」
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