魔導士の弱点
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「どうやら妖精の尻尾の魔導士は、自分達こそが最強か何かと勘違いしているらしい」
「まあ、確かに噂はいろいろ聞く。魔導士ギルドとしての地位は認めよう」
「……が、所詮は魔導士」
「戦いのプロ、傭兵には敵わない」
エバルー屋敷、その一室。壁中を背の高い本棚で埋め尽くしたその部屋で、四人の男達が対峙していた。
巨大な平鍋を片手で構えた長い三つ編みの男と、バンダナを付けた大柄な男――――傭兵ギルド“南の狼”に属する二人と睨み合う二人、左側に立つナツが右手を伸ばす。
「だったら早くかかって来い。二人一緒でいいぞ」
向けた右手、親指以外の四本の指の爪先が炎を纏う。伸びた炎はゆるりと揺れて、“CОМEОN”の文字を作り出す。その挑発に顔色を変えた二人を見てニアが肩を竦めた。この程度の挑発に乗るとは、と心の中で呟いて、意識を切り替えるように息を吐く。
「兄ちゃん……マジでコイツ等ナメてるよ…」
「片方は私の得意な火の魔導士、もう片方はギルドに属さぬ半人前…簡単な仕事になりそうだな」
苛立ちを隠さない弟の呟きに、兄の方が変わらない調子で答えた、瞬間。
「―――――とう!!!」
「っ、ナツ!!」
「問題ねえ…っと!!」
開戦の合図はない。左手に平鍋を構えた兄が地を蹴った。駆けた先にいるのはナツ。身を翻したニアが反射的に声を上げる。
一気に距離を詰め、両手で握り直した平鍋を振り下ろす。重量のある武器の側面はナツを叩き潰そうとして、けれどその軌道から外れるように上に跳んだナツを捕えられずに床を派手に砕く。床だった破片が宙を舞い、それから身を守るべくニアは大きく一歩後ろに跳んだ。
だが兄の方はそれ以上動かない。着地して体勢を立て直そうとしたナツの上着を、兄の後ろから駆けた弟ががしりと掴む。そのまま腕を振り回し、力任せに放り投げ飛ばした。
「うおおおおおおおお!!!!」
投げられた勢いを殺す事も出来ず、そのまま壁を突き破る。咄嗟に近くの手すりを掴んで飛んでいく勢いを抑え体勢を立て直しにかかると、たった今開けた穴から平鍋を構えた兄が飛び込んできた。即座に手すりを離して、空中で一回転しながら一階の床に着地する。ナツの足が床に着くと同時に、振り下ろされた平鍋が先ほどまでナツが掴んでいた手すりを床ごと叩き割る。
飛んで行ったナツを目で追って、ニアは舌打ちを一つ。部屋にはたった今ナツを投げ飛ばした大柄の傭兵と自分の二人、平鍋を持った方はナツを追撃に行ったから今は放っておいてもいいだろう。
……何度だって言うが、今ここで無駄に戦うつもりはない。傭兵二人と戦うのだってこの依頼の一部なのだから、部外者たる自分が出しゃばるなんて以ての外だ。けれど居
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