第一章
[2]次話
だがそこがいい
江坂かをりがよく言われる言葉がある。
「顔はいいのに」
「正直整ってるわよ」
「スタイルだっていい」
「外見は女の子らしいのよね」
「とてもね」
「しかも料理上手ときた」
「女子力はあるのに」
そうしたスペックのことを言われてから言われるのだった。
「おじさん臭いのよね」
「もう行動や好みの全てが」
「好きな食べものといい」
「特技もね」
「何よ、別にいいじゃない」
かをり本人はいつもむっとした顔で言う面々に返した。
「いや焼きが好きでお好み焼き焼くのが得意でも」
「まあそれはね」
「かをりちゃん大阪人だしね」
「悪いって訳でもないし」
「いいっていったらいいわ」
「じゃあいいじゃない、というかね」
かをりは友人達にいつもむっとした顔で言うのだった。
「女子力高くてもおじさん臭いと駄目なの」
「だから駄目とは言ってないでしょ」
「おじさん臭いのが悪いとはね」
「犯罪じゃないから」
「それ自体はいいのよ」
友人達はまたこう言うのが常だった、だが。
いつもだ、こうも言うのだった。
「けれどね」
「そのハイスペックが勿体ないのよ」
「顔とスタイルと料理の腕がね」
「女子力全体がね」
「けれどそのハイスペックがおじさん臭さでよね」
「全部台無しになってるのが残念なのよ」
「ううん、というか私ってね」
かをりは難しい顔でこの展開ではいつも最後はこう言うのだった。
「ありのままだからね」
「飾らないっていうのね」
「乙女チックは柄じゃないから」
「今のままってことね」
「そういうことよ」
こう言ってだ、かをりは自分を特に飾ることなく日々を過ごしていた。その彼女にだった。
文化祭でクラスの出しものがお好み焼きの屋台になった時にだ、クラスメイト達は是非にと言ってきた。
「宜しく頼むよ」
「どんどん焼いてくれよ」
「かをりちゃんお好み焼き焼くの得意だから」
「期待してるわよ」
「ええ、じゃあどんどん焼くわね」
かをりも断ることなく応える、そしてだった。
かをりは実際に屋台でお好み焼きをどんどん焼いていった、彼女の焼き加減は実に見事なもので。
焼き方だけでなくソースやマヨネーズの使い方も絶妙でだ、食べる客達は唸って言った。
「いいな」
「美味しいじゃない」
「焼き加減もソースやマヨネーズの使い方も」
「具の加減もどれもよくて」
「まるでプロじゃないか」
「子供の頃から焼いてるからね」
かをりは屋台の鉄板の向こう側で頭に三角巾制服の上にエプロンという如何にもという恰好で客達に応えた。
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