第三章
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「そうはどうにも」
「仕方ないでしょ、それぞれの高校で部活が違うんだし」
「それでか」
「そう、じゃあ稽古またやるから」
「ああ、じゃあさ」
「またね」
由美子は弟が部屋を出るとまた落語の稽古を再開した、とかく熱心に稽古をしていたがその文化祭の直前にだ。
部長がだ、こんなことを言い出したのだ。
「怪談を回していこうか」
「怪談落語をですか」
「短いのをどんどんね」
部員の中でというのだ。
「全百話でね」
「それってつまりは」
「百物語しないかい?」
こう言うのだった。
「文化祭では」
「あれやっていいんですか?」
部員達は部長の提案に眉を曇らせて尋ねた。
「あれ確か危ないですよ」
「全部終わったら何かが起こるんですよね」
「おかしなことが」
「そう言われてますよね」
「そうらしいね。けれどね」
部長はそれでもと言うのだった。
「催しとしては面白いだろうし」
「だからですか」
「やってみるんですか」
「ものは試しで」
「それで、ですか」
「そう、それでね」
実際にというのだ。
「やってみようって思ってるけれど」
「止めた方がいいんじゃ」
「ちょっとそれは」
「何かあったら」
「そうなったら」
「私もです」
由実子も言うのだった。
「そうしたことは」
「駄目かな」
「幽霊が出て来たりとかはまだいいですけれど」
それでもというのだ。
「何が起こるかわからないんですよね」
「本当にね」
「とんでもないことが起こったら」
「駄目だっていうんだ」
「はい、ですから」
「君も止めた方がいいっていうんだ」
「そう思います」
由美子も他の部員達と同じ顔であった、その顔で部長に言う。だが部長もこだわりを見せてだ。
やってみてもとまだ言う、しかし最終的には顧問の先生がだ。
何かあったら駄目だと言って止めた、こうして普通の落語の披露となってだ。
由美子は持ちネタの中でもいいと思うものをどんどん出して笑いを取った、彼女の落語は好評だった。
しかし最終日の最後の出しものの後でだ、その百物語はどうかと言った部長からこう言われた。
「足を止めたる奈良の京って言ってたよね」
「はい、歌舞伎の口上ですね」
弟に言ったことをそのまま部長にも話した。
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