第二章
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「二人で話す方が面白いだろ」
「漫才は漫才でしょ」
由美子はその弟にむっとした顔で返した。
「落語はこうなの」
「一人でやって笑ってもらって終わる」
「それが落語だから」
それでというのだ。
「二人で話すのはそれはそれでよ
「別だっていうのかよ」
「そうよ」
稽古を中断して正座したままで弟に言う。
「それはそれ、それでね」
「落語は落語っていうんだ」
「そう、というか落語面白くない?」
「俺どっちかっていうと漫才だからか」
お笑いはとだ、弟は姉に話した。
「だから聞いてても笑えても」
「漫才程じゃないっていうのね」
「そうだよ、漫才いいじゃないか」
「いいけれど私はあくまでなの」
「落語でいくんだな」
「そう、好きだからね」
「姉ちゃんの喋りだと漫才でもいけそうだけれどな」
弟はこうも言った。
「あくまで漫才かよ」
「そうよ、じゃあまた練習するから」
自分の部屋に来て漫画を借りるついで言ってきた弟にこうも言い返した。
「またね」
「ああ、たださ」
「ただ?」
「今さっき言っていた足を止めたるって何だよ」
「白波五人男の口上の一つだけれど」
「それも落語かよ」
「元は歌舞伎らしいわ」
弟にこのことも話した。
「何かね」
「歌舞伎かよ」
「歌舞伎には詳しくないから」
落語は詳しくともだ。
「だからね」
「そこはよく言えないか」
「ちょっとね」
「何か落語も色々あるんだな」
「あるわよ、深いわよ」
それこそと言いつつ自分が稽古の時に持っている扇を見た。
「果てしなくね」
「そうなんだな」
「それでその落語をよ」
「今も練習してか」
「稽古ね」
そこは訂正させた。
「そして文化祭にも出るから」
「姉ちゃんの高校の文化祭でか」
姉弟で違う高校に通っている、レベルは弟が通っている高校の方が幾分であるが上である。
「落語やってるのか」
「あんたの高校落研ないの?」
つまり落語研究会がだ。
「そっちは」
「あるけれど漫才部と一緒でさ」
「どっちかっていうと漫才の方をなのね」
「熱心にやってるさ」
落研のメンバーもというのだ。
「どうもな」
「そうした落研もあるのね」
「そっちの高校は漫才部ないのかよ」
「落研だけよ」
ないというのだ。
「本当に」
「それは寂しいな」
漫才好きとしてはというのだ。
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