第一章
[2]次話
落語女子
中津由美子は落語が大好きだ、高校でも落語研究会に入っていてとかく様々な落語を知っていて上手に話せる。
それで発表会でも的確な落語を披露したのだが。
その彼女にだ、研究会の部長は言ってきた。
「今度の文化祭でうち落語やるけれど」
「私出ていいんですか」
「全員参加だから」
出るのは当然だというのだ。
「君もだよ」
「有り難うございます」
「うん、ただね」
「ただ?」
「君僕より落語知ってるけれど」
伊達にネタを二百知っている訳ではなくてだ。
「凄いと思うけれど上方落語ばかりだね」
「江戸、東京の落語はですか」
「ないよね」
「合わなくて」
だからだとだ、由美子は部長に答えた。
「それでなんです」
「知らないんだ」
「それでやらないです」
「そうなんだ」
「あの、うどんだってそうじゃないですか」
「おつゆが真っ黒っていうんだ」
「あれがです」
苦い顔でだ、由美子は部長に話した。
「私どうも駄目でお蕎麦も」
「そばつゆもやっぱり違うんだよね」
「しかも噛んだら駄目ですよね」
「ざるそばとかはね」
「あれも駄目で、噛まないと」
蕎麦はというのだ。
「ですから」
「そうしたのも駄目で」
「それが落語のネタに出ますよね」
「蕎麦の話も結構あるからね」
「あの食べ方がどうも」
苦い顔でだ、由美子は部長に話していく。
「抵抗もありますし喋り方も」
「そっちもだね」
「駄目なんです、現代落語でも」
古典落語だけでなくそちらでもというのだ。
「違いますよね」
「やっぱりね、今は新幹線ですぐでも」
「口調も何もかもが違っていて」
それでというのだ。
「やっぱりあっちの落語は駄目です」
「関西一辺倒だね」
「はい、上方落語のその間が」
まさにそれがというのだ。
「いいんですけれど」
「江戸には江戸の間があるからね」
「怪談系の落語もそうですよね」
「そうそう、何でもね」
「ですから私は江戸は駄目です」
あくまで上方落語だというのだ。
「それで文化祭でもです」
「上方でいくんだ」
「そうします」
笑って部長に話した、家でもよく練習をするが落語より漫才が好きな弟にはこう言われた。
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