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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十六話 苦悩
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万、将兵が彼をニーズホッグと呼ぶはずだ。


結局グライフスとは一時間程も話していた。どちらかと言えば向こうが話しこちらが相槌を打つといった感じだ。話の内容は現状への憂い、憤懣だ。何故俺に、と思ったが考えてみればグライフスには他に話せる人間が居ないのだろう。

艦隊司令官が部下の前で国家に対する不満を言う事は出来ない。一つ間違えば部下の反乱を誘発しかねない、その時担がれるのはグライフス自身だ……。俺自身その事では不自由な思いをしている。

シュトックハウゼンには話し辛いのだろう。グライフスはシュトックハウゼンの憔悴ぶりに驚いたようだ。これから共に最前線を守る事になる相手に負担になる様な愚痴を言うべきではないと考えているらしい。だからと言って俺に愚痴をこぼされても困るのだが……。

イゼルローン要塞に与えられた部屋に戻るとそこにはケスラーとクレメンツが待っていた。
「グライフス司令官とはお話が弾んだようですが」
クレメンツの言葉に思わず苦笑が漏れた。どうやらこの二人もオーディンの情報を知りたがっている。二人にソファーに座るように勧めた。三人でコーヒーを飲みながら話す。

「半分ぐらいは愚痴であった。だが、なんとも身につまされる愚痴であったな。もっとも今の帝国で愚痴の出ない指揮官が居るとも思えないが……」
ケスラーとクレメンツが顔を見合わせて苦笑している。

「グライフス提督の艦隊も状態は良くない様だ。おそらくは我々と似たような悩みを持っているのだろう、口振りからそれが分かった」
「では司令長官の艦隊も」
「似た様なものでしょうな……」
俺の言葉にケスラー、クレメンツが言葉を続けた。二人とも言葉に力が無い。コーヒーが苦い、ミルクを少し足した。

「ワーレン少将が国内の改革を優先することは出来ぬものかと言っていました。改革の宣言だけでも良い、それだけで大分兵の士気は変わるはずだと」
「参謀長、それは無理だ。リヒテンラーデ侯は殆ど孤立しているらしい。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯だけではない、グライフス提督の話では他の貴族達も反発しているようだ」

「となりますと」
「大胆な改革は出来ない、そういう事だな」
「しかし、それでは」
クレメンツが何かを言いかけ、溜息を吐いて口を噤んだ。

「このままでは反乱軍には勝てませんな。負ければ平民達の不満は募ります、いずれは爆発する。最初は暴動かもしれません、鎮圧も可能でしょう。ですがそれが革命への流れに繋がるのは避けられますまい。過去の歴史がそれを証明しています」

冷徹、と言って良いほどに未来図を描いたのはケスラーだった。そして言葉を続けた。
「勝つためには国内の改革が必要です、改革を行うためには強力な政府が要る。そのためには……」
「政府を支える強大
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