暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十五話 地雷
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
そうは思っていなかった……。周囲には悟らせませんでしたがいつも何処かで自分の身体の事を遣る瀬無い気持ちで思っていたのかもしれません。

「参謀であれば問題は有りませんでした。私が倒れてもヤン提督、ワイドボーン提督が穴を埋めてくれたはずです。実際私はこれまでかなり無理をしたと思います、多分あの二人を無意識のうちに頼っていたのでしょう」
「……」

「ですが今度はそうはいきません。あの二人を頼ることは出来ない……。この艦隊の中でその危機を凌がなければなりません。そのためにもチュン参謀長を中心にまとまって貰わなければならない……、チェックですよ、准将」

シェーンコップ准将が難しい顔をしてチェス盤とヴァレンシュタイン提督を見ています。先程までの面白がるような表情は有りません。低い声でゆっくりとヴァレンシュタイン提督に問い掛けました。

「だから会議の中に入らないと?」
「そうです」
「……この実戦を想定した訓練もそれが理由ですか、バラバラな彼らをまとめるには敵が必要だ。単にこの艦隊の欠点を見つけるという事だけではなく敵を与えその敵と戦う事で一つにまとめる……」
シェーンコップ准将が駒を動かしました。

私は提督と准将を交互に見ました。准将は険しい表情を、ヴァレンシュタイン提督は嬉しそうに笑みを浮かべています。
「鋭いですね、シェーンコップ准将。ならばもう少し推理を働かせてみてはどうです?」

「推理?」
シェーンコップ准将が訝しげな表情をしています。私にも分かりません、一体提督は何を推理しろというのか……。
「第三艦隊が何処に居るか……、分かりませんか?」
「第三艦隊……」

シェーンコップ准将が考え込んでいます。第三艦隊は私達同様ランテマリオを目指しているはずです。ただどのルートを使うかは分かりません。私達はリオ・ヴェルデ経由でランテマリオを目指そうとし第一艦隊の奇襲を受けました。同じようにリオ・ヴェルデ経由を使うのか、それともケリム経由か。

第一艦隊の奇襲を受けた直後の提督を思い出しました。哨戒活動の継続を命じる提督に対しチュン少将が疑問を呈した時の事です。“第三艦隊の所在は確認できているのですか”。提督は第三艦隊の所在を知っているようです。

提督が私と准将を交互に見ました。悪戯っぽい笑みを浮かべています。
「ヒントを差し上げましょう、ワイドボーン提督もヤン提督も第一特設艦隊が寄せ集めの烏合の衆だという事を知っています、それが危険だという事も……。この訓練はそれを克服するために用意されました。訓練の最大の目的は第一特設艦隊を精強ならしめる事……」

「訓練の最大の目的は第一特設艦隊を精強ならしめる事、ですか……。そうか、ケリム星系、そういう事か……」
呻くようなシェーンコップ准将の言葉でした。私に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ