暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十五話 地雷
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の地雷が何か、分かりますか?」

シェーンコップ准将が難しい顔をしてチェス盤を見ています。動かした駒を見ているのか、それとも地雷の事を考えているのか……。
「この艦隊が寄せ集めの集団だ、などという事ではなさそうですな」
「それは既に見えています、そして皆が除去しようとしている。確かに地雷かもしれませんが危険度は少なくなりつつある。いずれはゼロになるでしょう」

准将がチェス盤から視線を私に向けました。
「中佐、貴官は分かるかね?」
「……皆が提督を必要以上に怖がっている事でしょうか?」
私の答えに提督は傷ついたような表情を浮かべ、シェーンコップ准将は大きな声で笑い出しました。

「なるほど、確かにそれは有りそうだな」
シェーンコップ准将がちょっと冷やかす様な口調で提督を見ています。そしてさりげなく駒を動かしました。提督は何か言いかけて口を閉じ苦笑してから話し始めました。もっとも視線はチェス盤を見ています。

「この艦隊の地雷が私、という事では合っていますね。私は指揮官としては失格なんです、それがこの艦隊の地雷です」
シェーンコップ准将がちょっと驚いたような表情をしています。私も多分似たような表情をしているでしょう。提督が指揮官に向いていない?

「よく分かりませんな、私は貴方ほど指揮官に向いている人は居ないと思いますよ。貴方は状況判断が的確だし運も良い、何より貴方は常にクールだ。貴方の下に居れば武勲が立たないまでも長生きが出来そうだとおもっているんですが……」

シェーンコップ准将が上官の品定めを本人の目の前で行いました。大胆というか何と言うか、ヴァレンシュタイン提督は苦笑していますが本来こんな事は許されない事です。ですが評価そのものは私も間違っているとは思いません。

確かに提督ほど指揮官に向いている人は居ないと思います。何よりも兵の命を大切にする気持ちの強さはどんな提督も及ばないでしょう。誰よりも指揮官に相応しい人だと思います。

「過大評価ですね、その評価はヤン提督にこそ相応しいでしょう。まあ、それはともかく私は身体が丈夫じゃないんです、月に一度は寝込んでいる。もし戦闘中にそんな事が起きたらどうします?」
「……」

「指揮官の役割は決断する事です。その指揮官が居なくなる……、艦隊は混乱するでしょうね」
私もシェーンコップ准将も言葉が有りません。提督は笑顔を浮かべています。その口調は冗談を言っているように軽やかでしたが笑顔は何処か寂しそうに見えました。

私はずっと提督の傍に居ました。だから提督の事は良く知っているつもりです。前線、後方の両方で傑出した能力を持っている提督は軍人としては完璧に近いと思っています。多少身体が丈夫ではない所もそれほどハンデになるとは思っていませんでした。でも提督自身は
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ