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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十四話 訓練
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に運んだ。
「うむ、大丈夫だ、確かに美味しい。提督からの差し入れだ、皆も食べてくれ」

大丈夫とはどういう意味だろう、一瞬そう思ったが考えるのは止めた。そんな事よりも俺もクッキーを食べなければならない。一つ手にとって口に運んだ、確かに美味しい。彼方此方で美味しいという声が上がった。

少し休憩を入れようと参謀長が提案し、皆が賛成した。冷めたコーヒーを熱いコーヒーに代え、クッキーをつまむ。うむ、間違いなく美味しい。あの冷徹、非情、峻厳と言われる司令官がクッキーを作る……。エプロンを着たのだろうか、それとも割烹着か……。似合いすぎる、思わず噴き出しそうになった。

「急ぐ必要は有るが焦る必要は無いのだ。提督の仰る通り、先ずは現状を把握する事だ」
「参謀長の仰る通りですな。そこから問題を片付けていけば良いでしょう、幸い提督は現状をきちんと認識しているようだ。無理な事は言わないと思います」
チュン参謀長とブレツェリ副参謀長がクッキーをつまみながら話している。先程とは違って表情が明るい。

「今の第一特設艦隊は最低のレベルに有ると思う事だ。これから先は上がるだけだと思えば良いだろう、我々が暗い顔をしては兵達の士気が下がる一方ではないか」
「同感だ、良い酒を作るには時間がかかる。焦らずじっくりと仕込めば良い」
デュドネイ准将とビューフォート准将だ。その隣でマリネッティ准将が頷いている。マリネッティ准将だけではない、皆が頷いていた。


会議が終わったのはそれから二時間後の事だった。休憩後は嘆く事よりもどうすれば現状を変えられるかを中心に皆が意見を出した。参考になったのはスコット准将の経験だ。国内の補給部隊の警備が主任務だった准将の話を皆が聞きたがった。准将も最初は恥ずかしがっていたが徐々に話してくれた。

実りある会議だったと言えるだろう。会議が終わった時には皆がこれからなのだと口々に言った。俺もそう思う、第一特設艦隊が精強になるのはこれからなのだ。ワイドボーン、いずれは借りを返してやる、倍にしてな。

クッキーは全てきれいに無くなっていた……。



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